【旅行記】特急宗谷と日本海オロロンライン路線バスで行く道北・稚内旅〜地下鉄南北線に乗車し丘珠空港へ~
前話
ましけ号で留萌から札幌に到着。計画では札幌到着後はすぐに丘珠空港に移動して、丘珠空港で飛行機を撮影しながら飛行機の出発を待とうと考えていた。しかし、この日は生憎の雨。これでは飛行機も撮影できそうにないので、代替プランを実行。札幌市近辺で未乗となっている路線のうち、札幌市営地下鉄南北線に乗車してから北海道を後にすることにした。
札幌市営地下鉄南北線を乗りつぶす
札幌市営地下鉄には、東西線、南北線、東豊線の3路線があるが、このうちJR札幌駅に隣接する地下鉄のさっぽろ駅には、東豊線と南北線が乗り入れている。このうち東豊線には、2021年冬に初めて北海道へ訪れた際に乗車している。今回はさっぽろ駅を発着するもう一つの地下鉄、南北線に乗ってみる。
2つの路線は、いずれも札幌市の南北を結んでいる。東豊線が東側走り、中央区を介して、東区と豊平区を結ぶ一方で、南北線は東豊線よりもやや西側を走り、こちらも文字通り北区と南区の間を走っている。南北線は札幌で最初に開業した地下鉄である。冬季オリンピックに合わせる形で、北24条駅と真駒内駅の間が1971年に開業。その後、1978年に北24条駅~麻生間が延伸開業して、現在の運行区間となった。

さっぽろ駅からは、先に南の終点である真駒内駅へ向かった。南北線は札幌の繁華街を縦断する形で走っている。さっぽろを出ると、大通、すすきのと停車した。すすきのまでは列車も混雑したが、すすきので7割くらいの乗客が降りていった。ここから南北線は中島公園や豊平川の地下を通り、豊平区へ走っていく。豊平区では平岸を経由し、澄川から今度は南区へ入る。この路線は、札幌の地下鉄3路線で唯一地上区間がある。南平岸駅から先は真駒内まで高架橋を走っていく。高架橋はシェルターに覆われていて、車窓はしっかりとは見えないが、南区へ入ったあたりからは山が近くなった。その後は自衛隊の真駒内駐屯地の横を通り、列車は終点の真駒内に到着した。すすきのを発車して以降は、基本的に乗客は減る一方で、午前の郊外行の列車ということもあり、真駒内に到着したときには各車両数人しか残っていなかった。
乗車記録 No.20
札幌市営地下鉄南北線 真駒内行
さっぽろ→真駒内 5000形

札幌市営地下鉄は他地方の地下鉄とは異なり、ゴムタイヤで走っている。南北線は真駒内へ向けて勾配を登って行くため、勾配に強い方式としてゴムタイヤを用いた案内軌条式が採用された。このゴムタイヤ方式は騒音が小さいというメリットもある。後に開業する東西線、東豊線は、架線から電気の供給を受けているが、南北線は第三線軌条を用いている。そのため、架線は張られていない。真駒内駅は1面2線だが、駅の奥には留置線があり、車両を留置できる構造になっていた。車両基地自体は自衛隊前駅と真駒内駅の間にある。そのため真駒内駅まで行かない自衛隊前行の列車も設定されている。

真駒内駅の改札外へ出て来た。駅周辺は団地が立ち並び住宅街が広がっている。駅から少し離れた場所にもニュータウンが開発されているので、駅はこうした住宅街へ行く路線バスのターミナルになっている。景勝地として知られる定山渓へ行くバスの他、東豊線の終点である福住行へ行くバスも発着している。地下鉄の乗りつぶしには便利かもしれない。

駅前には札幌オリンピックのモニュメントがあり、時計台が設置されている。駅の北西側に広がる団地は五輪団地と呼ばれ、オリンピック開催時は選手村として使われた。駅から少し歩いた場所には南区の市役所がある。また真駒内セキスイハイムアイスアリーナはここからバスで数分の場所にある。フィギュアスケートの大会や中規模クラスのライブの会場として使われており、イベント開催時には、この駅からシャトルバスが運行されている。
乗車記録 No.21
札幌市営地下鉄南北線 麻生行
真駒内→麻生 5000形

さて、真駒内駅には20分ほど滞在し、折り返しの麻生行に乗車して、終点の麻生まで南北線を乗り通した。帰りはすすきのへ近づくにつれ、乗客が増え、途中からは小学生の団体の乗車があった。多くの乗客はすすきので降りて行き、さっぽろで今度は麻生方面へ行く乗客が乗り込んできた。南北線はさっぽろ駅から先、北12条、北18条、北24条、北34条と駅が続く。大通から遠ざかっているのは分かるが、余所者には何があるのかは正直よく分からない。北34条の先までは北海道大学の東側を走る樽川通の1本東側の通りを北へ進む。北34条駅を出ると、列車はカーブして、樽川通りの地下へ入り、終点の麻生駅に到着した。
これで南北線を乗り終え、札幌の地下鉄で未乗なのは残り東西線だけとなった。札幌は路面電車と札沼線も未乗なので、来年か再来年にはもう一度来て、これらの路線に乗車しようと思っている。その時は観光地巡りもやってみたい。
麻生駅は九州から来るとあそうと読みたくなるが、こう書いて”あさぶ”と読む。麻生は北区のターミナルの一つ。駅はイオン札幌麻生店や東光ストアと直結している。イオンの隣には麻生バスターミナルがあり、ここから丘珠空港をはじめとする各方面へ路線バスが発着している。札沼線(学研都市線)の新琴似駅は麻生駅から歩いて10分ほどの場所にある。近い場所にあるが接続はしていない。
麻生では30分ほど待ち合わせて、北海道中央バスの麻26系統麻生東苗穂線豊平行きで丘珠空港へ向かった。バスは栄町を経由して、丘珠空港通りを東進し、約20分で空港に到着した。
乗車記録 No.22
北海道中央バス [麻26]豊平行
麻生バスターミナル→丘珠空港
丘珠空港をはじめて利用し、北海道を後にする

今回は初めて丘珠空港を利用して、北海道から帰る。丘珠空港は札幌市街地の北東部にある小さな空港である。正式には札幌飛行場と呼ばれ、飛行場内には空港の旅客ターミナルの隣には自衛隊の駐屯地も併設されている。ここはJALグループに所属し、北海道内の小路線を運航する北海道エアシステム(HAC)の拠点空港であり、以前から北海道やその周辺へのコミューター路線が発着している。
一方、2013年以降はフジドリームエアラインズ(FDA)がチャーター便を飛ばすようになり、2016年には静岡空港との間の定期路線が開設された。その後、松本線、小牧線も加わり、北海道・東北以外の各地からの路線も就航するようになった。さらに今年に入ると、新潟空港を拠点とするトキエアが、新潟線を開設。当空港から新潟へも行けるようになった。
飛行場は札幌市街地にあり、新千歳空港に比べて、到着してからの移動時間が短縮できる点が最大のメリット。また、設備は最低限だが、その分空港もコンパクトで搭乗に時間がかからない点も注目されており、年々利用客は増加傾向にある。ただし、ジェット機を用いるFDAは、丘珠空港の滑走路が1800mしかない関係で、夏ダイヤのみの就航となっており、10月末~3月末の冬ダイヤ期間中は就航していない。札幌圏のサブ空港としての発展が期待されており、滑走路を延伸し、通年でジェット機が発着できるようにする計画がある。計画が実現すれば、本州方面からの便の拡充が可能となる。そうなればさらに便利な空港になることは間違いない。
現在の丘珠空港のターミナルは3階建てで、とてもコンパクトである。1階は到着ロビーと搭乗カウンターになっていて、各社のカウンターが並んでいる。2階が出発ロビーとなっていて、保安検査場や待合室がある。ゲートは一か所のみで全便が同じ搭乗口を使い、徒歩で飛行機に搭乗する。2階には小さいながらお土産屋と飲食店もある。3階には航空会社の事務所と展望デッキがある。展望デッキは事務所や会議室がある通路を通って行かないといけないので、少々気まずい。展望デッキ自体は大きくはないが、発着する飛行機を眺められるようになっていた。

空港内の食堂でお昼ご飯を食べた後、少し時間があったので、デッキへ出てみた。雨が降っていたが、ちょうど秋田空港から到着したHACのATR42-600型機を撮影することができた。HACは現在、全便がこのATR42-600型機で運航されている。写真のJA11HCは、同社がはじめてに導入したATR42だった。この機体、出会うのは実は2回目。約5年前、導入に際しての訓練飛行をおこなっていた同機を、鹿児島空港でたまたま撮影したことがある。鹿児島空港は先にATR機を導入していた日本エアコミューターの拠点空港で、HACの機材も、ここで訓練飛行を行っていた。HACのATR42-600は、このJA11HCが特別塗装となっている他、JA13HCはOneWorld塗装となっている。
FDAの丘珠-小牧線に搭乗し県営名古屋空港経由で九州へ

今回は丘珠空港から、FDAを利用して九州へ帰る。先述の通り、丘珠空港からのFDA便は、名古屋小牧、富士山静岡、信州まつもと線の計3路線が就航しているが、今回は名古屋小牧行に搭乗し、名古屋空港で熊本空港行の便に乗り継いだ。FDAはこれまで2度搭乗したことがあり、今回が3度目の利用だったが、今回は初めて乗り継ぎでの利用となった。写真は過去に撮影した搭乗機
この日は夏ダイヤの最終週だったので、今年のFDAの丘珠空港への就航最終日が数日後に迫っていた。冬は積雪や気温の影響から、滑走距離が延びるため、Embraer E170、E175クラスのジェット機でも、当空港への就航が難しい。丘珠空港とFDAで結ばれる3空港のうち、静岡、松本の2空港は新千歳便が通年運航しているが、名古屋小牧からは新千歳便の運航がなく、冬ダイヤでは札幌と県営名古屋を結ぶFDA便の運航がなくなる(もちろんセントレアから他社便がある)。
乗車(搭乗)記録 No.23
FDA 396便
丘珠空港→県営名古屋空港 Embraer E175 JA16FJ

この日はツアー客の利用が多く、乗客の多くが中高年層で、座席は8割程度が埋まっていた。駐機場を出発すると、あっという間に滑走路へ。まだ安全設備の案内を行っていたので、滑走路上で数分停止し、出発準備を整えた後に離陸した。
この路線の一つの見どころが丘珠空港からの離陸である。先述の通り、この空港の滑走路は1,800mしかないので、ジェット機は通称ロケットスタートと言われる急発進で滑走し、あっという間に大空へはばたく。この日は生憎、向かい風がとても強かったので、そこまでロケットスタート感はなかったが、動きだしたらあっという間に離陸し、すぐ滑走路の終端が見えた。上昇すると、眼下には札幌の市街地が広がった。

離陸すると市街地上空で針路を南西に変え飛行。機窓には豊平区周辺の市街地の景色を楽しむことができた。画面の中央にある円形の建物は札幌ドーム。その右手にはクラーク像で知られる札幌羊が丘展望台がある。ここから支笏湖方面飛行し、1日目に訪れた室蘭半島の真上を経由。函館周辺では渡島半島が見えていたが、基本的には雲の中を上昇し、津軽海峡を横断して北海道を離れた。

津軽海峡付近までは比較的安定した飛行だったが、この日、本州の日本海側には南北に寒冷前線が延びており、これに沿う飛行ルートだったので、その後はほぼひたすら揺れの中の巡航となった。ベルトサインは消灯していたが、飲み物はCAが各座席に注文を聞きに行き、逐一ギャレーへ戻って運ぶスタイルに。それでも途中何度か中断があり、かなり不安定な気流の中を飛行していった。機窓は基本的に雲だったが、秋田や新潟付近では時々本州の海岸線が確認できた。

新潟市の上空から本州の上空へ入った後、妙高市、長野県大町市の上空を飛行しながら、徐々に降下。岐阜県へ差し掛かると、ここには比較的発達した雲があり、雲に突入すると、ここでも結構な揺れが続いた。これまで揺れるフライトは何度か経験しているが、今回のフライトが一番揺れた気がする。三半規管が弱い自分はあまり揺れが得意でない。前線に近い場所を飛行し、揺れることはもはや確定的だったので、丘珠空港にいる間に酔い止めを飲んでおいたが、正解だったと思う。過去一番揺れだったが、酔い止めが効いていて、眠かったので、あまり記憶がない。
雲を抜けると、日が差し込んできて、急に街が広がった。最初はどこか分からなかったが、写真の滑走路で場所が分かった。ここは岐阜県の各務原市の上空。写真の滑走路は航空自衛隊の岐阜基地だった。

その後は愛知県の江南市や小牧市の上空を飛行して、名古屋空港に着陸。名古屋もついさっきまで雨が降っていたようだが、着陸時には晴れ間が差していた。写真には撮れなかったが、虹が出ていて幻想的だった。丘珠空港を出て、1時間30分ほどで名古屋空港に到着。あっという間過ぎて、名古屋に着いた実感があまりなかった。

名古屋空港では乗り継ぎ時間が2時間あったので、一旦外へ出て、デッキへ。今回は時間があったので最初から外へ出るつもりだったで、後ほど保安検査に入りなおしたが、乗り継ぎについての案内は特段なく、直接待合室に行けるのかどうかはよく分からなかった。
乗車(搭乗)記録 No.24
FDA 327便
県営名古屋空港→熊本空港 Embraer E175
名古屋空港ではしばらくデッキから行き交う飛行機を眺めたのち、再度保安検査を受けて、18時過ぎの飛行機で熊本空港へ。ほんとは福岡空港の方が都合がいいのだが、福岡空港便はこの時間しばらくなかったため、熊本空港へ下りることにした。熊本空港にもほぼ定刻に到着。熊本便は揺れが少なく、機窓には瀬戸内地域の夜景を楽しむことができた。熊本空港からはバスを乗り継ぐ形で帰宅。今回も大きな乱れなく、無事に前泊を含めて4泊5日の旅程を終えることができた。
おわりに
今回は1年半ぶりに北海道を旅し、特急宗谷と日本海オロロンラインを走る路線バスで稚内を訪れた。在来線特急として二番目に長い運行距離を誇る特急宗谷は、子どもの頃からいつかは乗り通してみたいと思っていた列車だった。今回、ついにその憧れの列車に乗車することができたことは、今回の旅の一番の思い出である。5時間強に及ぶ乗車時間の中で、列車は広い大地の中を走り、峠を越え、天塩川と並走して、大小いくつもの街を辿った。車窓からの景色がとても美しく、とても楽しい時間を過ごすことができた。JR北海道の特急列車は終着駅に到着する際に、アルプスの牧場という国鉄時代からの伝統的なチャイムが流れる。終着の街が広がり、チャイムが鳴ったときの、あのちょっとした疲労感と、終点へやってきたという達成感、まだ見ぬ街への期待、そしてまだ列車に揺られていたいという気持ちが入り乱れるあの瞬間がとても好きである。いろんな街を繋いで走る鉄道に揺られて旅をするその楽しさを改めて感じることができた。
稚内からの帰りは日本海オロロンラインを行く、路線バスと特急バスを乗り継いだ。豊富と留萌を結ぶ路線バスは、国内でも第3の運行距離を誇る路線だった。街が数十キロ間隔で点在する道北の日本海側を走っていく路線バス。この旅で初めて知った街もあり、いろんな街の様子を見ながら進むバス旅はとても楽しかった。一方、留萌から乗車した特急ましけ号は、路線バスが走ってきた道とは打って変わって、北海道の中でも険しい地形の中を走っていった。バスが走る国道231号はトンネルを掘りなおしたり、覆道が建設されていたりして、いかに険しい場所を走っているのかがバスの車窓からもよく分かった。断崖絶壁と聞いていたが、想像以上の険しさだった。しかし、そこにも小さいながらも人の営みがあり、バスは曜日運行ながらも沿線と札幌を結ぶ大切な交通手段として機能していることが分かった。また一つ北海道の知らなかった顔に出会えた気がする。そんなバス旅だった。
北海道の鉄道未乗路線も、いよいよ根室本線の東釧路~根室間と札幌近郊の札沼線、地下鉄東西線、路面電車を残すのみとなった。あと少しとは言え、根室と札幌は遠く離れているので、2回に分けて訪れるつもりである。とりあえず次回は、来年の春に根室本線に乗車してみようと考えている。初めて北海道へ行った際に乗車した釧網本線などの周辺路線にも足を延ばしながら、道東の旅を楽しむプランを計画している。その時にはまだ見ぬ北海道の表情を見てみたいと思っている。
北海道の他の旅行記
今回初めて乗車した路線
【鉄道路線】
JR北海道 日高本線 苫小牧-鵡川間
JR北海道 室蘭本線支線(室蘭支線) 東室蘭-室蘭間
JR北海道 宗谷本線 新旭川~稚内間
札幌市営地下鉄 南北線 真駒内-麻生間
【バス路線】
芸陽バス 西条エアポートリムジン 西条駅前-広島空港間
宗谷バス 天北宗谷岬線 稚内駅前ターミナル-宗谷岬間
沿岸バス 豊富幌延線 豊富駅-幌延深地層研究センター前間
沿岸バス 幌延留萌線 幌延深地層研究センター-留萌駅前間
沿岸バス 特急ましけ号 留萌駅前-札幌駅前間
【航空路線】
ANA 広島空港-新千歳空港空港
FDA 札幌丘珠空港-県営名古屋空港
※広島県内は省略