【旅行記】京阪電車と京都の中小鉄道を満喫する旅~ケーブルカーで比叡山へ編~
日本仏教の母山"比叡山"を目指し、地下鉄と京阪で坂本比叡山口へ

京福電気鉄道と嵯峨野トロッコに乗車した後、馬堀駅から普通列車に降り立った二条駅。2日目の乗り鉄はここが一区切りとなった。ここで1日目から2日目前半に乗りつぶした路線を振り返る。1日目は京阪の支線と叡山電鉄鞍馬線、鞍馬ケーブルに乗車。2日目前半は京福電鉄嵐山本線・北野線と嵯峨野観光鉄道線に乗車した。過去の乗車と合わせると、残す京都府の未乗路線は、京福電気鉄道の叡山ケーブル線と叡山電鉄叡山本線八瀬比叡山口~宝ヶ池間のみとなった。
そして、お隣の滋賀県もまた、完乗を目前に控えていた。滋賀県の未乗路線は、昨年夏に近江鉄道や草津線に乗車しため、坂本ケーブルのみとなっている。そう、残りの京都府・滋賀県の未乗路線は、3路線全てが比叡山に関連している。ここからは京都・滋賀の鉄道路線の完乗を達成するため、日本仏教の母山、比叡山を越える旅に出る。
乗車記録24
京都市営地下鉄東西線・京阪京津線行
二条→びわこ浜大津 京阪800系

二条駅では、JRから京都市営地下鉄東西線に乗り換えて、びわこ浜大津へ向かった。京都市営地下鉄は京阪京津線の列車が乗り入れている。地下鉄を御陵まで進み、そこから京阪京津線へと入った列車は地上に出て、京阪山科へ。東西線の駅も地下にあるが、京阪と京都市営地下鉄では運賃が異なる。その先では、京都府と滋賀県の境の峠を急カーブと急勾配で越える。大津側へ出た上栄町からびわこ浜大津間は併用軌道となっていて、道路上を電車が走っていく。一粒で3度おいしいのが京津線。この路線に乗車するのはこれで3回目だったが、何度乗車しても面白い路線だと思うし、京都-大津間の移動で急いでないときは、やっぱり京津線を選んでしまう。
乗車記録25
京阪石山坂本線 普通 坂本比叡山口行
びわこ浜大津→坂本比叡山口 京阪600系

びわこ浜大津では、数分の乗り換えで石山坂本線の坂本比叡山口行きに乗り換えた。石山坂本線はその名の通り、石山寺駅~坂本比叡山口駅間の路線で、びわこ浜大津がおおよその中間となっている。湖西線と並走する北側区間は、びわこ浜大津駅を出てすぐのところに大津線唯一の併用軌道区間がある。その後は大津京で湖西線とクロスして、やや標高の高いところを走っていく。車窓には時折琵琶湖望むことができるので車窓も楽しみな路線である。車内は地元客でにぎわっていた。

終点の坂本比叡山口駅に到着。滋賀県の未乗路線は坂本ケーブルのみと先述したように、この以前来たことがある。また、京阪石山坂本線にも4年半前に乗車済みだった。当時は石山寺駅からこの駅へやってきた後、今回のルートの逆を辿って京都市営地下鉄東西線の太秦天神川へと向かった。その後は吉野まで行ったと記憶している。駅の東側には湖西線の比叡山坂本駅がある。両者で駅名が似ていてややこしい。

坂本比叡山口駅からは、比叡山へと登る坂本ケーブルのケーブル坂本駅へと向かう。坂本比叡山口駅や比叡山坂本駅からは江若交通のバスが走っていて、そちらでもアクセスできるが、坂本比叡山口駅からなら徒歩15分ほどでアクセスできるので、今回は歩くことにした。ただ終始上り坂なので、そこは少し覚悟が必要かもしれない。
駅前を走る道は、日吉大社の参道となっている。日吉大社は全国の日吉・日枝・山王神社の総本山。天台宗や比叡山延暦寺との結びつきも強く、比叡山延暦寺や天台宗は、この日吉大社を守護神として崇拝してきた。また、平安京遷都時、都から見て日吉大社がある方角が鬼門だったことから、都の鬼門除けとしても崇拝されてきた大社となっている。参道の両側には寺院や天台宗の宗教施設が多くある。学校法人延暦寺学園が運営する比叡山中高もケーブル坂本駅の近くにある。明治時代に神仏分離令が出されたことで、寺院と神社は全く別のものとして扱われてるようになったが、本来両者は密接に関わり合う存在だった。そうした日本の宗教の歴史を垣間見れる場所でもある。
日本最長のケーブルカー"坂本ケーブル"に乗車して、滋賀県を完乗する

坂本比叡山口駅から徒歩15分ほどでケーブル坂本駅へと到着した。立派な2階建ての駅舎は、この路線が開業した昭和2年に建設されたもので、現在は国の登録有形文化財に指定されている。ここから乗車する通称坂本ケーブルは、正式には比叡山鉄道が運行する比叡山鉄道線と呼ばれる路線である。ただ、ほとんど比叡山鉄道という名前は使われておらず、同社のホームページでも坂本ケーブルと案内されている。坂本ケーブルは、ここケーブル坂本駅から山上のケーブル延暦寺駅までの2kmを11分で結んでいる。比叡山鉄道は、以前は京福電気鉄道の子会社だった。しかし、1993年に京福が京阪に株式を譲渡し、京阪の子会社となり京阪グループの企業となっている。現在の株主の中には延暦寺も名を連ねている。

坂本ケーブルは30分間隔の運行である。特筆すべきは、途中駅が2つある点。ほうらい丘駅ともたて山駅の2つが、それぞれケーブル坂本駅とケーブル延暦寺駅から300mの場所にある。ちなみに両方の駅は上下の車両がちょうど釣り合う位置にあるわけではないらしい。途中駅で下車したい場合は、事前に係員に下車する旨を伝える必要があり、下車する人が上下便どちらにもいない場合は、途中駅は通過となる。途中駅があるケーブルカーはほかにもあるが、個人的にはこれが初めての路線だった。
発車の5分前には改札が始まり、乗車することができた。小さなパンタグラフがついているかわいい車両は、「福号」と「緑号」の愛称が付けられていて、今回は乗車したのは、「福号」だった。パンタグラフの上には架線が取り付けられているが、よく見るとホームの先で途切れている。以前は区間全てに架線が張られていたが、現在は駅停車中に充電するシステムに変わっている。そもそもケーブルカーは、ロープを巻上機で巻き上ることで動いているので、車両自体に動力は必要がない。
乗車記録26
比叡山鉄道 比叡山鉄道線(坂本ケーブル)
ケーブル坂本→ケーブル延暦寺 福号

ケーブル坂本駅を発車したケーブルカーは延暦寺へ向けて標高をどんどん上げていった。比叡山の緑の中を進んでいく。この坂本ケーブルは国内で運行されるケーブルカー路線としては最長路線。同社ホームページによれば、梅田駅から本町駅や三ノ宮駅から神戸駅に匹敵する距離があるのだそう。所要時間が10分を越えるケーブルカーというのも珍しく、おそらく国内では六甲ケーブルと坂本ケーブルの2路線だけだと思う。標高が上がると、眼下に琵琶湖を見ることもできた。

終点のケーブル延暦寺駅に到着。到着をもって滋賀県の全線完乗を達成した。名前の通り、延暦寺の最寄り駅で、駅の左右両側からは滋賀県内の景色を眺めることができる。とても見晴らしのいい場所に駅がある。駅前には、無動寺参道と書かれた石碑と鳥居の立つ道がある。そちらへ歩いていくと、比叡山延暦寺で行われる修行の中でも最も過酷と言われる千日回峰行の拠点である無動寺明王堂がある。千日回峰行のは7年間で約1000日に渡って、東堂、西塔、横川、日吉大社とその間にある礼拝地を巡礼する修行である。今坂本ケーブルで登ってきた山の中を修行僧は深夜から早朝にかけて一人で行き来する。また、5年目には9日間の堂入りが行われ、この間は断食、断水、断眠、断臥で真言を唱え続ける修行も行われる。

快晴に恵まれたので、山上からの景色を楽しむことができた。霞がなければ、遠く御嶽山まで見えることがあるそう。この辺の景色は飛行機の機窓でも楽しみにしているが、飛行機からは金沢あたりまで見えるので、白山や御嶽山が見えても不思議ではない。琵琶湖の対岸に見えるのは去年近江鉄道で旅した近江八幡や米原方面の景色。米原や長浜はかなり北に行った場所にあることがここから見てもよく分かった。
比叡山延暦寺を訪ねる

計画していた旅程では、乗り継ぎに余裕を持たせていたので、延暦寺への到着がもう少し遅れる予定だった。そのため、延暦寺での時間が少なく、中には入らない予定にしていた。結果的には乗り継ぎも順調に進み、30分早く着くことができたので、見学していく時間も十分に確保できた。東堂、西堂、横川の3つのエリアで構成され、今回はその中心地となっている東堂エリアだけの見学だが、日本の歴史や仏教を語る上では外せない場所。やっぱり一回は見ておきたい。

入口で拝観料1000円を支払って中へと入る。先述した通り、延暦寺は東塔、西塔、横川と呼ばれる3つのエリアに分かれている。拝観料は3エリア共通となっていて、他エリアも巡拝することができる。
延暦寺は最澄によって開かれた天台宗の総本山である。最澄は唐に渡って仏教を学び、天台宗を国内で広めたため、伝教大師と呼ばれている。一方、同じ平安時代に広まった仏教との宗派には、高野山を総本山とする真言宗がある。高野山の開祖は空海で、こちらは弘法大師と呼ばれている。天台宗と真言宗は、奈良時代に政治に介入した仏教とは異なる新しい仏教の考え方を世の中に広めたとされる。天台宗と真言宗は合わせて平安二宗と呼ばれることがある。延暦寺は真言宗の総本山として、多くの僧侶が修行を行い、仏教を学んできた。その中には、浄土宗を開いた法然、浄土真宗を開いた親鸞、臨済宗を開いた栄西、日蓮宗を開いた日蓮などがおり、ここで仏教を学んだ後に各宗派を開祖している。すなわち、日本の仏教宗派の多くが、ここ比叡山をルーツにしている。そんな理由から、比叡山を日本仏教の母山と呼ぶ。

そんな天台宗の総本山延暦寺の総本堂となるのは、根本中堂。現在は2016年から10年かけての大改修が行われており、実際は本堂の周りを廻廊が囲む造りになっている。大きな屋根の建物に覆われている。延暦寺といえば織田信長による焼き討ちが有名である。現在の根本中堂は焼き討ちにあった後、徳川家光ににより、再建されたもの。そうした歴史的な建造物を次世代につなぐ改修工事が行われている。
改修中の現在でもお堂の中へ入ることができ、改修中の様子を見学できるスペースも設けられている。修学ステージと呼ばれるこのスペースからは、職人が大改修を行う様子を間近に見ることができた。お堂には本尊となる薬師如来が祀られている。その前には3つの灯篭がある。これは不滅の法灯と呼ばれ、1200年に渡り光り続けている。根本中堂を見たあとは、東塔地区にあるお堂を一つ一つ見てまわり、延暦寺バスターミナル側へと出た。
山上を行き来する"比叡山シャトルバス"で比叡山頂へ

延暦寺バスターミナルからは江若交通が運行する比叡山シャトルバスで比叡山頂へと向かった。延暦寺バスターミナルは、比叡山における交通ターミナルで、乗車するシャトルバスのほか、京都市街、堅田へのバスが発着している。京阪三条行のバスに乗り込めば、直接京都市街へ向かうことができ、このバスにも興味をそそられるが、今回はあくまで鉄道路線の乗りつぶしが目的。いつの日にか堅田から京都市街へバスを乗り継いで行ってみたい。
乗車記録27
江若交通 比叡山シャトルバス 比叡山頂行
延暦寺バスターミナル→比叡山頂
今回乗車した比叡山シャトルバスは、延暦寺の3エリアのうち一番北にある横川と比叡山頂を西塔、延暦寺バスターミナル、東塔経由で結ぶ。延暦寺の境内に入らずに坂本ケーブルから叡山ケーブルを乗り継ぐ場合は、延暦寺バスターミナルではなく、東塔バス停を使う。比叡山ドライブウェイは自動車専用道なので、歩くことはできず、東塔バス停から延暦寺バスターミナルまでは一旦延暦寺の中に入らないとアクセスが難しい。

比叡山ドライブウェイは、ケーブル延暦寺駅にほど近い場所で二手に分かれ、片方へ進むと京都側へ下山し、もう片方へ進めば比叡山頂へと向かう。バスは比叡山へ向かう道へと進み、さらに標高を上げていった。比叡山は雪が多く降る場所でもある。そのため比叡山を走るバスとこれから乗車する叡山ロープウェイ・ケーブルは冬季運休となる。冬季の比叡山はオフシーズンとなり、延暦寺へのアクセス手段は坂本ケーブルに限られる。
バスの車窓からも時折見えていたが、比叡山頂のバス停近くからは大津の市街地が一望できた。写真の裏手に標高848mの大比叡の山頂がある。比叡山を構成する山としては、ここが一番標高が高い。大比叡山頂は、京都府と滋賀県の境となっており、比叡山頂バス停は京都府側にある。しばらく大津の景色を眺めて、ここからは京都側へと下山する。
京福電鉄が運行する叡山ロープウェイ・ケーブルに乗車

比叡山頂から乗車するのは、この日の午前中にも乗車した京福電気鉄道が運行する叡山ロープウェイと叡山ケーブルカーである。大津側の坂本ケーブルはケーブルカーのみだったが、こちらはロープウェイとケーブルカーの2段構えになっている。神戸の旅の最後に乗車した摩耶ロープウェイ・ケーブルと似たシステムをとっている。
バス停の比叡山頂とロープウェイとしての比叡山頂駅は徒歩で10分ほど離れているので、計画の際には気を付けたい。隣接してガーデンミュージアム比叡があり、この園内を観覧して、バス停側の入口からロープウェイ側の入口へと歩くこともできる。この場合は入場料が必要である。比叡山頂に延暦寺があると思っている観光客も少なくないのか、ロープウェイで山上へたどり着いた人の中には、さらに先へ進まないといけないことを嘆いている人もいた。京都側から延暦寺へ向かうには、路線バスを使った方が便利だろうと思う。ケーブルカーでアクセスすると結構歩かないといけない。

簡素な造りの叡山ケーブル比叡山頂駅。駅へ着くと駅員から乗車するか聞かれたが、ロープウェイは15分間隔運行である一方、ケーブルカーは30分間隔で、次発便に乗っても同じケーブルカーに乗ることになるので、パスして次便を待った。発車の3分ほど前になると、ロープウェイーの乗車が開始された。ホームからは京都市街地が見える。バス停からは大津市街が見えたが本当に山のてっぺんにいることがよく分かる景色だった。見えているのは1日目に行った岩倉エリア。京都市の北側で盆地の中の盆地になっているところで、前日に歩いた岩倉駅や国際会館駅周辺の景色がよく見えていた。昨日は、国際会館駅から比叡山を見たが、今日はその逆。比叡山から国際会館駅を見る。
乗車記録28
京福電気鉄道 叡山ロープウェイ
比叡山頂→ロープ比叡
乗車記録29
京福電気鉄道 鋼索線(叡山ケーブル)
ケーブル比叡→ケーブル八瀬

ロープウェイは京都市街を眼下に見ながら、およそ3分で山の中腹にあるロープ比叡駅へと到着。ここでケーブルカーへと乗り換えになる。隣接するケーブル比叡駅へ向かいケーブルカーへと乗り換えた。この旅4路線目となる比叡ケーブルは、ケーブル八瀬駅とケーブル比叡駅間の1.3kmを走るケーブルカーで、正式な路線名は鋼索線となっている。ロープウェイは京都の市街地を見ながら見晴らしのいい場所を走る一方、ケーブルカーは比叡山の中腹から山麓にかけての緑の中を走っていく。このケーブルカーの運行時間はおよそ9分。通常、ケーブルカーはBGMや案内放送が流れていることが多いが、このケーブルカーはそういったものがなく、鳥のさえずりや川のせせらぎと言った自然の音と、ケーブルカーが走る音、さらには滑車が回る音を楽しめる。カランカランと滑車が回るケーブルカー独特の音は、なぜか癒される。

山頂からロープウェイとケーブルカーを乗り継いでケーブル八瀬駅へと降りて来た。ここは京都側からの比叡山への玄関口となっている。駅前には、この先出町柳で賀茂川と合流する高野川が流れている。駅舎の前に植えられたもみじの葉っぱが風に揺られて音を立てている様子が初夏を感じさせいい雰囲気だった。ケーブル八瀬駅からは歩いて叡山電鉄の八瀬比叡山口駅へと向かった。
叡山電鉄叡山本線の未乗区間を走破し、京都府の全線を制覇する

ケーブル八瀬駅から髙野川を渡った対岸にある八瀬比叡山口駅。出町柳から続く叡山電鉄叡山本線の終点駅である。以前はケーブル八瀬駅からこの駅まで木橋を渡ればすぐだったが、木橋が通行不可となったため、一度国道側に出て迂回が必要となっているため少々歩く必要がある。緑色の屋根が印象的な駅舎は1925年の開業当時に建設されたもの。2線あるホームの全体を覆う造りが特徴的で、とても趣がある。

しばらくすると、出町柳方面から折り返しとなる列車が入線してきた。頭端式のホームは終着駅としての風格を感じさせる。そこに現れるのは1両編成のかわいい電車。叡山電鉄のうち叡山本線系統の列車は原則1両での運転となっている。鞍馬線と同じく八瀬比叡山口方面の叡山本線も15分間隔。1両編成の電車が出たり入ったりを繰り返す。
入線してきた列車の折り返しの出町柳行普通列車に乗り込んで終点の出町柳へとむかう。乗車した700系電車は最近リニューアルが行われた車両のようで、車内はかなりモダンな雰囲気に改装されていた。
乗車記録30
叡山電鉄 叡山本線 普通 出町柳行
八瀬比叡山口→出町柳 叡山電鉄700系

京都府最後の未乗区間をロングシートで景色も見ずに乗車するのは少々もったいないので、一番後ろで後面展望を楽しんで出町柳へ向かうことにした。鞍馬線は途中から単線となるが、叡山本線は全線が複線となっている。叡山本線のうち、出町柳~宝ヶ池間は前日に乗車済みなので、宝ヶ池到着をもって、京都府の全線完乗達成となった。八瀬比叡山口駅から宝ヶ池間の途中停車駅は1駅なので、あっという間に宝ヶ池。駅に着く直前では対向列車とすれ違った。叡山電鉄が2018年に導入した「ひえい」と呼ばれる車両。一本後の車両は比叡だったらしい。今回は時間の都合で先を急ぐが、次に叡山電鉄を訪れた際には乗車したい車両である。宝ヶ池駅は鞍馬線が複線で分岐するので、駅構内が広々としている。宝ヶ池から先はどんどん市街地中心部方面へと進んでいくので、やはり乗り込んでくる乗客も多かった。
京阪特急ダブルデッカー車両で旅を締めくくる

数時間前に二条駅からびわこ浜大津行に乗り込んだあと、大津、坂本、比叡山、八瀬と巡り出町柳へと帰ってきた。地下鉄から始まって数時間のうちにいろんな形態の乗り物に乗れた密度の濃い時間だった。前半は少々駆け足だったが、後半は延暦寺を見て回る時間もあり、前半と打って変わってのんびりと旅することができた。
乗車記録31
京阪鴨東線・本線 特急 淀屋橋行
出町柳→淀屋橋 京阪8000系
さて、滋賀・京都両県の乗りつぶしを完了させた後も、最後まで乗り鉄の旅を楽しむ。1日目は京阪各停縛りで京都へ行き、近鉄で奈良を経由して大阪へ。2日目は阪急京都線で京都へと向かった。京都旅のフィナーレを飾るのは、2日間を通して、グループ会社を含めお世話になった京阪電鉄の顔ともいえる存在。「京阪特急」で出町柳から淀屋橋へと向かった。京阪特急といえば、やはりダブルデッカー車両だと思う。プレミアムカーにしようかと思ったが、天気がいいので見晴らしのいいダブルデッカーを楽しむことにした。京阪特急はこれまでにも何度か乗車したことがあるが、プレミアムカーに1度乗車した以外は、全部ダブルデッカーの2階席に座っている。それくらい京都・大阪の車窓を楽しむに最適な車両である。
京都から大阪へと戻り、今回の京都旅はここで終了。淀屋橋からは御堂筋線で新大阪へと移動後、新幹線で九州へと戻った。帰りの新幹線は何度も見るのになかなか乗る機会のなかった東海道・山陽新幹線のN700Sに初乗車だった。
終わりに
今回は、関西乗り鉄強化年間2回目の旅として、京都の中小鉄道をメインに乗り鉄した。観光客に人気の路線があれば、京都の日常を支える路線があり、また寺社仏閣に深く関わる鉄道があるのが京都の鉄道の特徴である。そうした様々な鉄道の姿を見ることができた2日間だった。乗り鉄と同時に、平等院や鞍馬、比叡山など、行ったことのなかった観光地や寺院も訪れることができた。日本国内の仏教の成り立ちや歴史について学ぶことができたのも、いい収穫だった。
京都の街では修学旅行生を多く見かけた。自分も中学生の時の目的地が京都だったから、懐かしく思えた。今、旅から帰ってきて毎回思うのは、実物や本物を見ること、本場の空気を味わうことの大切さである。ネットには情報が溢れている。どんな情報だって大抵手に入れることができる。オンラインやリモートで何もかもが完結する時代だからこそ、実際に自分の足で訪れて、目で見て、触れることの重要性は高まっているように思う。教科書に載っている建物の実物を目の前で見ること、歴史の舞台に自分で立ってみること、教科書に載っていない街の雰囲気、地域性、食等々の他地域の文化に触れること。それらは教室では学べない貴重な経験である。乗り鉄をメインに活動する自分にとっては、ネットや雑誌で見た電車を実際に見て、その列車が走る街や環境を知れることが何よりうれしい。そんな風に、自分や自分が住む地域とは違うものを知り、いろんな生き方や文化があることを学ぶことこそが、旅行の醍醐味なのだと思う。自分も2日間の京都旅で、京都について、そして関西について、また一つ学ばせてもらった。すれ違った修学旅行生たちの京都旅も、すてきな思い出になっていることを願いたい。
・今回の初めて乗車した路線
【鉄道路線】
京阪電鉄 中之島線 中之島-天満橋
京阪電鉄 交野線 枚方市-私市
京阪電鉄 鋼索線 ケーブル八幡宮口-ケーブル八幡宮山上
京阪電鉄 宇治線 中書島-宇治
叡山電鉄 鞍馬線 宝ヶ池-鞍馬
鞍馬寺 鞍馬山鋼索鉄道 山門-多宝塔
京福電気鉄道 嵐山本線 四条大宮-嵐山
京福電気鉄道 北野線 帷子ノ辻-北野白梅町
嵯峨野観光鉄道 嵯峨野観光線 トロッコ嵯峨-トロッコ亀岡
比叡山鉄道 比叡山鉄道線 ケーブル坂本-ケーブル延暦寺
京福電気鉄道 鋼索線 ケーブル比叡-ケーブル八瀬
叡山電鉄 叡山本線 八瀬比叡山口-出町柳
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