【旅行記】北関東鉄道探訪録 後篇 ~特急リバティりょうもうに乗車~

前話
 
 上毛電気鉄道の列車で到着した赤城駅。前篇の最後も特急列車で締めたが、今回もまた特急列車で旅を締めくくる。赤城からは東武鉄道の特急リバティりょうもう30号浅草行に乗車した。

赤城から浅草へ特急リバティりょうもうを乗り通す

 東武鉄道の有料特急列車の一つとして、伊勢崎線方面へ運転されている特急りょうもう。浅草と桐生線のここ赤城を結ぶ列車を基本とし、太田・館林発着の区間便と、伊勢崎線の終点伊勢崎発着、佐野線の終点葛生発着便が運転されている。赤城-浅草の基本系統は概ね1時間に1本の運転。同区間をおよそ2時間で結んでいる。
 この列車は桐生、太田、足利市、館林などの群馬県・栃木県・埼玉県内の各都市と都心を結ぶ役割を持つ。桐生や太田・足利市などから都心へはこの列車が唯一の都心への直通列車となっており、沿線から都心への大事な移動手段となっている。一方で、沿線にはスバルをはじめとする大手企業の工場や関連会社の工場が多数ある。そのため、都心からこれら工場へ向かうビジネス客の利用も多い。東武の特急列車といえば日光や鬼怒川温泉へ向かう観光利用が多いイメージがあるが、この列車に関しては、ビジネス客の利用がとても多い。その点が日光線系統の特急とは対照的である。
 
 今回は赤城を15時3分に発車する特急リバティりょうもう30号に乗車した。特急りょうもうには、以前佐野線・小泉線・伊勢崎線に乗車した際に一度乗車したことがある。その時はまだ500系「リバティ」がりょうもうの運用には入っておらず、全車両が200系・250系での運転だった。旧型のりょうもうには乗車したことがあるので、今回はリバティりょうもうの方を選択した。現在、赤城-浅草で運転されている特急りょうもうは16往復だが、このうちの8往復が「リバティ」での運転となっている。「リバティりょうもう」は3両編成で運転される列車と、6両編成で運転される列車がある。一本前の列車は6両編成だったが、この列車は3両編成だった。東武鉄道の特急列車は全車指定席。赤城駅では券売機ではなく、窓口で特急券を発売している。今回は事前にネット予約でチケットレス特急券を購入しておいた。
 
 「リバティ」への乗車も3年ぶり2度目だった。前回は東武日光線・宇都宮線に乗車した帰りに、特急リバティけごんに栃木~浅草間で乗車した。新型車両の部類に入るが、デビューは2017年ということでもうまもなくデビューから10年を迎える。汎用特急車両であり、特急りょうもうだけでなく、各地と都心を結ぶ特急列車に使用されている。各座席にはコンセントが設置されている。早朝から移動してきて、この先も夜中まで移動が続くので、やはり充電できるのはありがたい。ただし、コンセントが座席の肘掛けから体向きに設置されていて、ふとももに充電のアダプターが当たってしまうのが欠点。コンセントの向きが変えられる短い延長コードがあるといいかもしれない。 
 列車は赤城~太田間で東武桐生線を、太田~浅草間で伊勢崎線を走っていく。実は関東の大手私鉄で未乗区間が残っているのは東武鉄道だけ。旅行日の時点で桐生線と鬼怒川線の2路線が未乗だった。今回はこの列車で桐生線を乗りつぶしていく。なお、鬼怒川線の方も近いうちに乗車を予定している。その時にはまた「リバティ」にお世話になる。
 
 赤城からの乗客はまばらで、各車両2~3人程度の乗車だった。赤城駅を出た桐生線は、その先上毛線の桐生球場前駅付近まで、上毛線の横を走っていく。複線のように見えるが、それぞれ別の路線なので、時間が合えば2路線の列車が並走することもある。赤城駅構内で両線は接続されており、かつては東武から上毛電気鉄道へ直通列車の運行も行われていた。上毛電気鉄道では現在、東京メトロ(営団)03系の改造車の導入が進められているが、車両搬入の際にはこの渡り線が使用されている。桐生球場前駅の横を通過すると、その先で両路線は二手に分かれる。今度は2日目に乗車したわたらせ渓谷鐡道の線路が近づいてきて、列車は相老駅に到着した。
 
 相老駅を出た列車はしばらくわたらせ渓谷鐵道の線路と並走する。徐々にこちら側が見下ろす形となり、やがてわたらせ渓谷鐵道の線路がカーブして分かれていく。JR両毛線、東武桐生線、上毛電気鉄道、わたらせ渓谷鐡道と4つの路線が入り乱れるこのエリア。以前からどうやって乗車するか悩んでいた場所だったが、この東武桐生線の乗車をもっていずれの路線も乗車済みとなった。
 
 東武桐生線はその先で両毛線とほぼ直角に交差。下新田信号場のやや東側を通る。しばらく高いところを走るので、車窓には桐生市街地を一望できた。列車はまもなく新桐生に到着。東武版の桐生市の代表駅であるこの駅では、比較的多くの乗車があった。ここでは普通列車と行き違い。桐生線の普通列車は小泉線の東小泉発着で運転されている。日中は1時間に1本の運転で、特急りょうもうと交互発着となっている。
 
 新桐生を出ると、列車はこの先にある水道山という山の南側へまわりこみ、その後は南東方面へ走って太田へ向かっていく。桐生線内では途中藪塚にも停車した。車窓は街と写真のようなのどかな風景の繰り返しとなる。藪塚を出ると、治良門橋駅で運転停車し、赤城行きの特急りょうもうと交換した。やがて、太田の市街地が広がり始めると、線路は高架橋となり、右手から伊勢崎線が近づいてきて、太田に到着した。
 
 列車は太田に到着。以前降りたことがあるので、今回は下車せずそのまま先へ進む。太田到着をもって東武桐生線を完乗し、それと同時に群馬県内の鉄道路線の完乗も達成した。関東地方では、東京都、千葉県、埼玉県に次ぐ4県目の完乗県となった。列車は太田から伊勢崎線へ入り、浅草までこの路線をひた走っていく。私鉄路線としては日本一の長さを誇る伊勢崎線。太田~浅草間も94.7km離れている。
 ここ太田は言わずと知れたスバルの企業城下町。ここではビジネス客の大量乗車があり、3両編成の列車は一気にほぼ満席となった。この列車以降の特急りょうもうは太田始発の列車が加わり、30分に1本の運転となる。それだけビジネス客の利用が多いのだろう。満席となった車内ではいたるところからパソコンをカタカタする音が聞こえてきて、旅行中なのに自分も仕事しているような気がした。
 太田を発車すると、伊勢崎線はスバルの群馬製作所の横を走っていく。伊勢崎線はここから直線的に館林へ向かうのではなく、足利市を経由するため、一旦北東へと進む。直接結んでいるのは小泉線の方で、列車の乗車時間だけで見ると小泉線の方が短い。ただし小泉線は東小泉で系統が分かれており、ここで15分程度の待ち時間が生じる。したがって、所要時間的には伊勢崎線の普通列車の方が早くなっている。小泉線は館林~西小泉、東小泉~太田の系統で運転されており、後者は基本桐生線と直通し、東小泉~赤城間での運行を行っている。
 
 列車は渡良瀬川に接近し、両毛線の足利駅と川を挟んで反対側に位置する足利市に到着。既に太田の時点でほぼ満席だったので、足利市から乗車する人の姿は少なかった。桐生と足利市の間も、両毛線の方が直線的に走っていて、東武は太田を経由するためやや遠回りである。足利市を出ると伊勢崎線は、向きを変えて南東へと走り始める。街と街の間はのどかな田園風景が広がる。この路線は館林までは単線である。太田~館林では東武和泉を除く全ての駅で交換ができるが、どの駅も一線スルー方式ではない。駅の度に列車は加速と減速を繰り返した。
 
 列車は館林の到着。ここ館林は小泉線と佐野線が枝分かれする伊勢崎線のターミナル駅の一つ。学校終わりの時間だったので、駅は高校生などの学生の姿が多かった。佐野線、小泉線ともに乗車済みで、この駅にも一度来たことがあるが、それももう5年以上前の話になってしまった。小泉線は少々慌ただしく乗車したので、またのんびりと乗車してみたい。
 館林を出て、茂林寺前、川俣と通過した列車は、その先で利根川を渡り、群馬県から埼玉県へと入る。1日目は水上付近で眺めた利根川。群馬県を出るあたりではもうこんなに大きな川になっている。この日ずっと利用してきた「ぐんまワンデーデジタルパス」は川俣までが有効である。ここから先は有効区間ではなくなるが、このまま先へ進み、浅草で乗り越し精算をする。川を渡った先で秩父鉄道との乗り換え駅である羽生を通過した。この駅とその先の加須の2駅は朝夕時間帯のみりょうもうが停車する。この列車が上り列車ではこの日最後に通過する列車だった。
 
 鷲宮を通過してしばらくすると、車窓には東北新幹線の高架橋が見えてくる。東北本線を跨ぎ、東北新幹線を潜ってカーブすると、東北本線と合流する形で久喜に到着した。太田から満席だったが、ここで降りる人が多く、車内はここで一気に閑散とした。どうやらここでJRへ乗り換えて都心方面へ行く人が多いらしい。確かにここなら湘南新宿ラインと上野東京ラインのどちらの列車もやって来るので東京駅、新宿駅のどちらへも行きやすい。てっきり、北千住までは混雑すると思っていたが、予想は外れた。久喜駅も以前は一部のりょうもうのみが停車していたが、2017年のダイヤ改正から全列車が停車するようになっている。
 久喜は都心でもよく目にする行先の一つ。東急田園都市線、東京メトロ半蔵門線から東武スカイツリーラインに直通してくる列車は伊勢崎線ではここ久喜で折り返す。東武動物公園以遠は、伊勢崎線の久喜発着と日光線の南栗橋発着に分かれる。日中10分間隔で運転される急行は、久喜発着、南栗橋発着が交互に運転されている。日中はここで完全に系統が分離されており、一般列車で東武動物公園側~館林方面へ移動する場合は乗り換えが必要になる。朝夕については浅草発着の区間準急が運転されており、都心から1本で行くことができる。
 
 久喜を出た列車は、次に東武動物公園に停車。東武動物公園を出ると次は北千住となり、しばらくノンストップで走っていく。東武動物公園を出てしばらくすると、車窓の左手に南栗橋車両管区春日部支所の車両基地が広がる。北春日部駅の西側に位置するこの車両基地は、日光線・伊勢崎線などで活躍する特急型車両などが所属している。もちろん、今乗車中の500系もここに所属している。”自宅”の横を颯爽と通過した列車はまもなく春日部を通過した。
 
 北越谷から先のスカイツリーラインは北千住まで複々線となる。列車はその複々線の外側線を走っていく。この付近は右側の座席に座ると、東武、メトロ、東急のいろんな車両を眺められて楽しい。しかし、午後は眩しいのが難点で、なかなか右側に座る機会がない。越谷、草加を経由して、いよいよ列車は東京都内へ入る。このあたりを通るのは恐らく3回目になると思うが、全てが特急列車での乗車。沿線の各駅は通過しかしたことがない。
 
 昨年3月に連続立体交差事業が完了した竹ノ塚、そして大師線との接続駅である西新井を通過すると、昔列車の撮影に来たことがある五反野駅付近で北千住への到着放送が流れた。車内に残っていた多くの乗客も、降りる準備を始めた。やがて列車は荒川を渡る。穏やかに晴れていたこの日の東京。夕暮れの車窓がとても美しく、名鉄で中部国際空港到着時に流れるあの曲を思い出した。
 多くの路線が乗り入れる北千住駅では、残っていた乗客の大半が下車していき、ここで車内もガラガラに。おそらく乗車した車両には3人くらいしか乗っていなかったと思う。伊勢崎線の複々線区間は、内側の各駅停車が自動的に日比谷線へと変わることで終わりとなる。この先、曳舟までは半蔵門線方面へ向かう列車も走るが、路線はカーブが連続し、沿線の各駅も下町の雰囲気が漂い、ローカル感が増す。車内ではスカイツリーの案内が流れるが、おそらく観光で乗っている人はあまりいない。
 
 曳舟で亀戸行きの列車を待つ大行列の横を颯爽と通過すると、列車は最後の途中停車駅、東京スカイツリーに到着。以前のここと浅草の間は乗車券のみでも特急に乗車できる特例があったが、現在は廃止されている。車内では乗車券だけでは乗車できない旨の案内が行われていた。
 東京スカイツリーを出ると、列車は隅田川の鉄橋の手前で一旦停止。浅草駅を発車する反対列車を待ち、やがてゆっくりと隅田川を渡って、終点の浅草に到着した。
 
 赤城からおよそ2時間、列車は終点、そしてこの旅のゴールの浅草に到着した。ビジネス利用が多い特急列車で途中混雑した区間があったものの、桐生線、伊勢崎線の車窓を存分に楽しむことができた乗車時間だった。
 赤城から「ぐんまワンデーデジタルパス」を利用していたので、川俣から先の運賃はこの駅で精算した。改札窓口で申し出ると、一瞬何のきっぷだっけみたいな顔をされたが、川俣からの運賃を精算したいというと、あああのきっぷのことかと分かってもらえた。川俣~浅草間の920円を精算して、改札を出場し、今回の旅の本体部分はこれで終了となった。
 ここからは都営浅草線へと乗り換え、京急線経由で羽田空港へ。その後飛行機で九州へと戻り、この旅の全日程を終えた。前篇では使ったことのなかった北九州空港便を利用したが、今回も佐賀空港を初めて利用して帰宅した。
 

おわりに

 昨年秋に引き続き、北関東周辺の鉄道路線を巡った今回の旅。今回は前回の旅に比べて巡る路線が多く、少し慌ただしい旅となったが、まだ乗車したことのなかった多くの路線と出会うことのできた旅だった。
 今回は北関東3県のうち、栃木県と群馬県にフォーカスをあて、いろんな路線に乗車したが、昔ながらの路線があり、新しい路線があり、またローカル線があり、地域に密着した私鉄線ありと、いろんな鉄道・軌道路線を楽しむことができた旅だったように思う。群馬県はこれで全ての路線を乗り終えることができた。関東では、東京都、千葉県、埼玉県に次ぐ3県目の完乗県となった。なお、この北関東探訪録はこれで終わりとなったが、北関東エリアの全路線を乗り終えたわけではない。まだ茨城県に5路線、栃木県に2路線を残している。このうち、6路線には今年の春の旅で乗車することを計画している。北関東にはまた数か月後にお世話になる。その旅もまた楽しみである。
 

その他の関東地方の旅行記

 

今回はじめて乗車した路線・区間

【鉄道路線】
上越線ガーラ支線 越後湯沢-ガーラ湯沢
上越線 越後湯沢-渋川
わたらせ渓谷鐡道 わたらせ渓谷線 桐生~間藤
宇都宮ライトレール 宇都宮芳賀ライトレール線 宇都宮駅東口~芳賀・高根沢工業団地
上信電鉄上信線 高崎~下仁田
上毛電気鉄道上毛線 中央前橋~西桐生
東武桐生線 赤城~太田
 
【バス路線】
日光市営バス 足尾-JR日光駅線 双愛病院-JR日光駅間