【旅行記】大阪で未乗路線を巡ったあと青森で青函トンネル記念館ケーブルカーに乗車する旅~龍飛崎から帰路に就く編~

前話
 
 新青森駅からスタートした2日目は、奥津軽いまべつ、三厩を経由して、青函トンネル記念館を再訪。昨年乗車することのできなかったケーブルカーに無事に乗車することができた。これで今回の旅の目的は全て果たすことができた。青函トンネル記念館からは蟹田、青森、青森空港、羽田空港と経由しながら、九州へ戻った。
 

龍飛崎で夏景色の津軽海峡を眺める

 龍飛崎からは乗合タクシー「わんタク定時便」を使って、蟹田駅へ向かった。「わんタク」は奥津軽エリアで運行されている乗合タクシーで、利用者が時間を指定するデマンドタイプと、あらかじめ設定されたダイヤで走る「定時便」の2種類が運行されている。昨年秋にここへ訪れた際には、青函トンネル記念館から奥津軽いまべつ駅まで、デマンドタイプのタクシーに乗車したが、今回は定時便を利用してみた。
 ケーブルカー下車から定時便の発車時刻まで45分程時間があった。天気次第で青函トンネル記念館を見るか、龍飛崎を見に行くか決める計画だったが、天気に恵まれたため、ケーブルカー下車後は歩いて龍飛崎へ向かった。青函トンネル記念館から龍飛崎の津軽海峡・冬景色歌謡碑前までは徒歩15分ほどで着く。
 
 歌謡碑の前にやってきて、赤いボタンを押す。津軽海峡・冬景色が流れる中で、石碑の後ろに広がる夏景色の津軽海峡を眺めてみた。昨年来た時は秋だった。その時に撮った写真と今の景色を比較してみる。龍飛崎の斜面の山々の色が違う。夏の本番が近づくこの季節。木々の緑は鮮やかで、海の色もより一層青かった。風は相変わらず強い。下手に動くと吹き飛ばされそうである。時折駐車場に車がやってきて、観光客が立ち寄っていく。しかし、あまりに風が強くて、津軽海峡・冬景色が流れている間に車に戻っていく。津軽海峡の対岸には北海道がうっすらと見える。近くて遠い北海道。今回は訪れないが、もう既に近々訪問することを決めている。
 

乗合タクシーわんタク定時便で蟹田駅へ

 龍飛崎に別れを告げて帰路に着く。これから乗車するわんタク定時便は、あらかじめ指定された停留所のほか、ルート上の任意の場所またはルート外の蟹田港、外ヶ浜中央病院、青函トンネル記念館で乗り降りができる。予約した際には青函トンネル記念館で予約していたが、龍飛崎へ歩いていくことにしたので、前日大阪にいる間に乗車地をホテル龍飛に変更した。歌謡碑の前を指定すれば、そこからも乗車できるが、停留所から乗る方が、いちいち説明しなくていいから楽である。
 歌謡碑からホテル龍飛は徒歩で2~3分のところにある。ここは今年春からわんタク定時便の停留所に追加された場所。ホテルの入口で待っていると、わんタク定時便のワゴン車がやってきた。前回は奥津軽いまべつ駅までの利用だったが、今回は蟹田駅まで利用してみた。デマンドタイプは予約がない区間をどんどんショートカットして走るが、定時便は決められた停留所を必ず経由するので、路線バスのような形で走っていく。原則予約が必要だが、定時便の場合は飛び乗りも可能らしい。途中、奥津軽いまべつ駅では、休憩停車で15分ほど停車した。この便には最後まで他の乗客の姿はなく、終始貸切状態で蟹田駅に到着した。
 

津軽線の普通列車で青森へ

 龍飛からおよそ1時間20分、わんタク定時便で蟹田駅へとやってきた。ここでタクシーから津軽線の普通列車に乗り継ぐ。わんタク定時便は蟹田で津軽線の普通列車に接続する形で運行されている。朝夕の通学需要がある際には津軽線代行バスとして中型・大型の車両が走る一方、需要の小さい昼間はワゴン車のわんタク定時便が走る。鉄道だとそんな使い分けはできないので、確かに効率的だと思う。
 前回は早朝に訪れた蟹田駅。昼間はみどりの窓口も営業している。きっぷは購入済みだったので、改札で駅員にきっぷを提示して改札内へ。既に乗車する列車も到着していて、スムーズに乗り換えることができた。
 
 跨線橋を渡り、2・3番のりばへ。3番のりばの隣には留置線が1本あり、GV-E400系気動車が停車していた。試運転か何かで来たのかなと思ったが、津軽線は非電化区間が被災した現在も青森-蟹田間で1往復だけ気動車の運用があり、それに使われる車両だった。おそらく、非電化区間へ車両を送り込んでいた頃の名残の運用だと思う。GV-E400系は奥羽本線の弘前-青森間でも普通列車の運行がある。おそらくこれも津軽線蟹田以北への車両の送り込みの兼ね合いのはず。蟹田(正確には新中小国信号場)-三厩間の事実上の廃線が決まったため、蟹田駅に気動車がいる光景も、近い将来には見納めになることが予想される。
 
 蟹田からは津軽線の普通青森行きに乗車して、終点の青森へ。赤紫帯の701系に今回もしっかりお世話になる。JR東日本の青森・秋田エリアの普通電車はほぼこの車両しか走っていないので、ちょっと飽きている感も否めない。しかし、やっぱりこの車両を見なければ両県に来た気がしない。
 
 2番線の出発反応標識には「中三厩」の文字。現状、ここから先へ進む列車は海峡線へと進む貨物列車しか存在しない。海峡線へ進む列車がこのホームに停車して、発車する際にもおそらくこの反応標識が点灯するはずだが、三厩へ行く列車はもうこのホームから出発することはない。大船渡~盛間が廃止された大船渡線が使う一ノ関駅のホームには、未だ盛と書かれた出発反応標識が残っていて、かつて大船渡線が盛まで続いていたことを示している。蟹田駅のこの標識も交換されなければ、鉄路が三厩へ続いていたことの証人となるかもしれない。
 
乗車記録 No.18 津軽線 普通 青森行 蟹田→青森 701系
 
 津軽線から陸奥湾を見れる区間はそう長くない。しっかりと見れる区間は蟹田-瀬辺地間のわずかな区間だけ。夏の陸奥湾を眺めて、列車は青森へ歩みを進める。奥には夏泊半島と下北半島が見えた。蟹田から乗車したのは10人ほどだったが、一駅一駅乗車があり、青森に近づくにつれて、乗客は増えていった。所要時間は50分。こんなに時間かかったっけと思ったら、途中の中沢で9分も停車した。直前の駅では貨物列車とすれ違ったものの、ここでは何ともすれ違わなかった。
 
 青森駅に到着。乗ってきた列車の隣には蟹田行のGV-E400系が停車していた。先ほど蟹田駅で見かけた車両は乗ってきた列車の後続の普通列車として、青森に帰って来る。それと同時に青森からも蟹田へ気動車の普通列車が運行され、車両が交換される形である。両方向の列車は奥内駅ですれ違う。蟹田へ行った車両はその後運用はないが、そのまま停泊しているのか、それとも回送で青森まで戻ってくるのか…。それは調べてもよく分からなかった。 
 

大きな変貌を遂げた青森駅と空港バス

 青森駅に到着。数か月来ない間に青森駅が全く別の駅のようになっていた。前回来た時建設中だった駅ビル&LOVINAが4月末に開業し、新しい青森駅の顔となった。建設工事中は後ろにある駅舎までかなり迂回していかなくてはならなかったが、建物の中を通って駅改札へ向かえるようになり、とても便利になった。旧駅舎の頃の青森駅は知らないが、その頃の駅を知っている青森県民からすれば、とても大きな変化だろう。
 
 青森駅からは比較的スムーズな乗り継ぎで、青森空港へ。青森駅と青森空港間の空港バスは、JRバス東北が運行している。空港バスをJRバスが運行しているというのは、珍しい気がする。青森駅から青森空港までの所要時間は45分ほど。青森空港は市街地とそれほど離れていないが、全線一般道経由のバスのため、市街地を抜けるのに時間がかかる。青森市も人口30万人なので、街の規模は大きい。市街地を抜け、空港へ向かう車窓には八甲田山が見えていた。
 
乗車記録 No.19 JRバス東北 青森空港線 青森空港行 青森駅前→青森空港
 

JAL羽田-青森線に搭乗し、青森を後にする

 24時間という短い滞在だった今回の青森訪問。旅程は予定通り進み、青森空港に戻ってきた。空港では少し時間があったので、フードコートで青森名物の味噌カレー牛乳ラーメンを食べた。羽田空港からの到着便が機材整備のため少し遅れていたが、龍飛崎からここまでほとんど休む暇なく動いてきたので、ちょうどいい小休憩になった。この後、羽田で飛行機を乗り継ぐが、ここでも1時間30分を設けていて、時間を持て余しそうだったので、遅れたくらいが逆にちょうどいい。青森名物を食べて、保安検査を抜け、搭乗口へ。短時間滞在だった青森に別れを告げて、羽田行の飛行機に乗り込んだ。
 
 青森空港からはJALの羽田空港行に搭乗した。前々回の記事でも紹介したが、青森空港と羽田空港を結ぶ便は、JALだけが就航し、1日6往復が運航されている。多客期を中心にBoeing 767-300が投入されることもあるが、基本的にはBoeing 737-800で運航されている。平日日中の便だったため、搭乗率はあまりよくなく、指定した後方席はガラガラだった。20分ほど遅れて搭乗開始となり、定刻の出発時刻から40分ほど遅れた16時頃に青森空港を離陸した(写真は1日目に撮影した搭乗便と同じ便)。
 
乗車記録 No.20 JAL 146便 青森空港→羽田空港 Boeing 737-800
 
 この日の東北地方は快晴。関東も雲が広がっていたが、全区間で機窓からの景色を楽しむことができた。離陸直後の機窓には津軽平野が広がる。真下には黒石市街が見えた。弘南鉄道弘南線の黒石駅も発見。しばらく飛行すると、今度は1日目に行った弘前市街地が見渡せ、弘前駅もわずかに確認することができた。鉄道路線を使って旅すると、大きな街から小さな街までいろんな街を訪れることができる。飛行機はこれまで旅してきた路線や街の上を飛行し、過去の旅の思い出を蘇らせてくれる。思い出すと案外とても小さなことまで覚えている。
 
 白神山地を眺めた後、秋田県へ入ると、奥羽本線コースで飛行。大曲や横手、湯沢などの市街地を眺めて飛行した。電車に乗っていると、市街地全体の大きさや、街と街との距離感をとらえるのは難しいが、空の上からだとそれがよく分かる。頭の中の地図と機窓に広がる景色を照合させて、あそこは〇〇だなと考えながら飛行機に乗るのがとても楽しい。昼間だとすぐに分かるが、夜景だともはや謎解きクイズみたいになる。
 その後は新庄市の上空を飛行し、天童あたり蔵王山の上を飛んで福島へ飛行。仙台市街から福島県の浜通りエリアは結構離れている印象だが、空の上から見ると、目と鼻の先に見えた。その後は徐々に高度を下げて行き、水郡線コースで福島から茨城へ。水戸線コースで筑波山の背後を回り、羽田空港へ近づいていった。
 
 今回のフライトは楽しみにしていたことがあった。それは都心上空を通過するルートでの着陸。新宿や渋谷の真上を飛行して、羽田空港に着陸するこのルートは、視界が良好で、南風が吹く午後時間帯のみで運用されている。九州から東京へ行く際は、あまり午後の便は使わず、これまで東北方面から羽田への航空機を利用したのも晩秋の季節で、北風運用だったため、このルートでの着陸は未だ体験したことはなかった。今回は夏の夕方便の利用だったので、予約したときからこのルートで着陸できるのではないかと楽しみにしていた。結果、予想通りに都心ルートでの着陸となり、都心の上空を通過して羽田空港に着陸。大迫力の東京の街を楽しむことができた。
 

羽田で乗り継ぎBoeing 787-8で福岡へ

 青森空港からの搭乗便は、定刻から20分ほど遅れて、羽田空港に到着。羽田空港ではそのまま福岡行に乗り継いだ。遅れて到着したが、かなり余裕のある乗り継ぎだったので、逆に乗り継ぎ時間が短縮され、20分ほどの乗り継ぎで福岡行に搭乗することができた。羽田-福岡で搭乗したのは、Boeing 787-8。JALの国内線用のB788は希少な存在である。これまで羽田-伊丹で1度搭乗経験があったが、今回はその時以来約3年ぶりの搭乗となった。やはり夕方の福岡行の需要は大きくほぼ満席で出発。出発はむしろ早発だったが、羽田空港のランウェイチェンジのタイミングの離陸となったため、離陸まで30分以上かかった。西日本方面は雲に覆われていて、機窓は楽しめず、高い高度にも雲があり、福岡までのほとんどの区間で雲の中の飛行となった。帰ってきた九州は梅雨前線の影響で土砂降りの雨。この日九州北部は梅雨入りし、本格的な雨の季節へと突入した。1泊2日で大阪と青森を巡ってきた今回の旅行は、全ての旅程を順調に終え、福岡空港で幕を閉じた。
 
乗車記録 No.21 JAL 329便 羽田空港→福岡空港 Boeing 787-8
 

終わりに

 大阪と青森という離れた場所を1泊2日で巡った今回の旅。短期間の旅行だったが、龍飛崎から大阪の街中まで、いろんな場所を旅することができて、密度の濃い時間を過ごすことができた。ここまで目的地が離れている旅行は今回が初めてだった。旅行記を書くにあたって、タイトルを考えるのがとても難しく、結局思いつかずにかなり安直なタイトルになった。1粒で2度美味しい、そんな旅行だったように思う。
 旅を振り返ると、大阪では主に千里エリアの未乗路線に乗車。今年3月に開業した北大阪急行南北線や国内のモノレールで唯一未乗だった大阪モノレールに乗車し、午前中だけだったが、大阪の鉄道路線を楽しむことができた。青森を旅程に組み込んだため、一部路線への訪問は次回以降に持ち越しとなった。次回訪問時は大阪をメインとした旅で大阪を満喫したいと思う。
 一方、青森では昨年乗車することができなかった青函トンネル記念館のケーブルカーに乗車するため、奥津軽エリアに再訪した。ケーブルカーには無事に乗車することができ、奥津軽いまべつ駅や龍飛崎にも再び訪れることができた。短い滞在時間だったが、初めての夏の青森、奥津軽を満喫した滞在だった。青森県はこれで全路線完乗となった。一方で東北地方の乗りつぶしはまだまだ道半ばである。今後も鉄道を通じて、いろんな街や景色に出会えることを楽しみに、今後も東北を旅していけたらと思っている。
 

東北地方のその他旅行記

 

今回はじめて乗車した路線

【鉄道路線】
大阪市高速電気軌道 長堀鶴見緑地線 大正-門真南間
北大阪急行 南北線 千里中央-箕面萱野間
大阪モノレール 国際文化公園都市モノレール線 彩都西-万博記念公園間
大阪モノレール 大阪モノレール線 門真市-蛍池間
青函トンネル記念館 青函トンネル竜飛斜坑線 青函トンネル記念館-体験坑道間
 
【バス路線】
阪急バス [26]箕面萱野駅-彩都西駅間
弘南バス 青森空港線 青森空港-弘前駅前間
JRバス東北 青森空港線 青森駅前-青森間
 
【航空路線】
JAL(J-AIR) 伊丹空港-青森空港
JAL 青森空港-羽田空港