【旅行記】仙台近郊路線と陸羽西線を巡る旅~ANA羽田-庄内線に搭乗し旅を終える~

 
 仙台近郊路線と陸羽西線を巡る旅の最終日は、新庄から陸羽西線に乗車後、余目で特急「いなほ」へ乗り換えて、鶴岡を訪ねている。ここからは庄内交通が運行する空港バスで庄内空港を目指し、ANA羽田-庄内線に搭乗して、今回の旅を終えた。

庄内地方を代表する鶴岡市の玄関口、鶴岡駅とエスモールBT

 山形県の庄内地方を代表する都市の一つ、鶴岡市。古くは庄内藩の城下町として栄え、現在もその面影を残しながら、この地方の中心都市としての役割を果たしている。ここでは1時間10分の待ち合わせで空港バスに乗り換える。あまり遠くへは行けないが、乗り換え時間を使って、少し駅前を歩いてみることにした。
 筆者はこれまで何度か羽越本線の列車でこの街を通ってきたが、降り立つのはこれが初めてだった。分岐する路線のないため、乗りつぶしの旅ではなかなか立ち寄る機会がないが、陸羽西線を降り立った余目から庄内空港を目指していた今回の旅程は、鶴岡を訪ねるにはちょうどよい機会だった。
 羽越本線においては、ほとんど途中駅という扱いである鶴岡駅。このあたりの列車の運行上の拠点は、庄内平野の北側に位置する酒田駅が担っている。直前に乗車した特急「いなほ」も一部は酒田発着で運転されており、普通列車もこの駅で系統が分かれている。酒田は新潟・庄内エリアと秋田エリアの境目であり、酒田以南の羽越本線の普通列車は、そのほとんどが新潟地区で活躍するGV-E400系での運転である。一方、酒田~鶴岡間には、日中に1往復だけ秋田の701系を使用した普通列車が運転されており、通常はここが赤紫帯を纏う701系の運用の南限となっている。
 村上~鶴岡間は、日本海の海岸線を進む区間であり、普通列車の本数は少ない。その中で最も本数が少ないのは、新潟県内の村上~鼠ヶ関間となっており、山形県内区間では朝夕を中心に鼠ヶ関-酒田間の区間列車が走っている。庄内地方の2大都市、鶴岡と酒田の間はもう少し本数が多くてもよさそうに思えるが、この区間完結の列車というのは先述した1往復のみで、ここから鼠ヶ関方面と運転本数はほとんど変わらない。
 駅は2面3線で、特急停車駅のため、みどりの窓口と指定席券売機の両方が稼働している。待合室横にはこじんまりした土産物店とNewdaysが並ぶ。この後、庄内空港でも買うチャンスはあるが、ラーメンのお土産がおいしそうだったので、これを購入した。
 
 駅前はかなり都会的な印象だった。駅前へ続く道の両側には、商業施設や産業振興センター、ホテルなどが建ち並び、連絡通路で結ばれている。左手の建物は「MARICA」という商業施設で、現在も営業している。もともとこの建物の奥にはジャスコ鶴岡店があり、そちらとも連絡通路で結ばれていたらしい。2000年代にジャスコが撤退した後は、手前の建物だけが残り、営業を続けている。
 駅前ロータリーは、バスロータリーとタクシー・一般車の乗降場に分かれている。その中央には巨大なモニュメントが設置されている。「大地」という名のこのモニュメントで、人が担いでいるのは稲藁。ここが米どころであることを象徴している。
 鶴岡の市街地は、東西に横切る羽越本線の南側に多く広がっている。その中心にあるかつての鶴岡城址、鶴岡公園周辺には、庄内藩の中心地として栄えた時代の史跡などが多く残っている。鶴岡は庄内藩の政治の中心地として、酒田は北前船の寄港地であり、港町として栄えてきた。駅前に立つと、その違いを確かに感じる。酒田駅の周辺は、商店や民家が多いが、こちらは、オフィスビルやホテルが多く、そうした街並みが、それぞれの街の役割を静かに物語っている。
 
 ところで、個人的に庄内地方と聞いて思い出されるのは、数ヶ月前に訪れた沖永良部島・徳之島への旅である。2つの島は、西郷隆盛が流刑となった際に過ごした場所として知られているが、ここ庄内もまた、西郷隆盛と深い縁で結ばれた場所として知られている。
 庄内藩は戊辰戦争の際に幕府側につき、西郷隆盛らが率いる新政府軍とは敵対関係にあった。結果的に幕府側が敗れることになるが、その際、西郷隆盛は庄内藩に対して寛大な降伏条件を提示した。これに感銘を受けた庄内藩士たちは、後に鹿児島まで西郷を訪ね、その教えを請うたという。
 沖永良部島では、島の中心部であり、西郷隆盛が収監されていた牢屋があったとされる和泊を訪ね、南洲神社を訪問した。南洲とは西郷隆盛の雅号である。隣接する西郷南洲記念館では、館長さんから、南洲神社は全国に4つあり、和泊以外の3つは鹿児島市内、宮崎県都城市、そして山形県酒田市にあると教えていただいた。
 酒田に南洲神社があるのは、庄内藩と西郷隆盛のつながりによるものである。今回はその南洲神社を訪ねることはしないが、一見すると何のつながりもないように思える鹿児島の離島と山形の一地域が、明治維新を代表する一人の偉人によって結びついている。そんなことを思い出しながら、鶴岡の街を歩いた。
 
 さて、鶴岡駅から少し歩き、駅の西側にあるエスモールという商業施設へとやってきた。その一角にはバスターミナルも併設されている。次に乗車する空港バスは鶴岡駅前も経由するが、こちらが始発。バスを待つにもこちらの方がよさそうだったので、ここから乗車することにした。
 エスモールは庄内交通が運営する商業施設。歩いて向かうと、ちょうど10時を迎え、商業施設が開店したところだった。2階建ての建物には、1階にドトールコーヒーやサーティワンアイスクリーム、スーパーのアオキ、サンドラッグ、アパレル店舗などが入居し、2階にはダイソー、新星堂、くまざわ書店などが入っている。地方の中心都市にあるショッピングモールとしては比較的テナントも充実しており、地域住民に愛されているようだった。
 建物の裏手にはバスターミナルが整備されており、バス窓口も設置されている。バスターミナルの向かいには庄内交通の本社があり、商業施設の隣には、いずれも同社が運営する東京第一ホテル鶴岡やフィットネスクラブもある。エスモールを中心としたこの一帯は、庄内交通の中核をなす場所となっていることがわかる。
 エスモールの一角にあるバスターミナルには、周辺への路線バスのほか、山形・仙台への高速バス、東京への夜行バスなども発着し、鶴岡・庄内の玄関口としての役割も果たしている。庄内エリアから各地へ向かう高速バスは、基本的にここ鶴岡を経由するが、一部には酒田発着で鶴岡を経由しない便もある。時刻表によれば、その際には、ここから庄内観光物産館まで連絡バスが運行され、乗り換えられるようになっているらしい。
 待合所の後ろにはバス窓口もあり、定期券や高速バスの乗車券などが取り扱われている。商業施設から直接バスターミナルへつながっているため、天気が悪くても雨に濡れる心配がなく、バスの発車が近づくまで買い物をして過ごせるのもうれしい。この後は昼頃に飛行機に乗るため、エスモール内のスーパーで軽食を購入し、休憩所で食べながらバスを待った。

庄内交通が運行する庄内空港連絡バスに乗車する

 さて、エスモールバスターミナルからは、庄内交通が運行する庄内空港行きのバスに乗車した。庄内空港は鶴岡と酒田の中間地点付近にあり、両方向からバスが運行されている。鶴岡、酒田のいずれからも所要時間は30~40分ほど。航空機の出発時刻に合わせて運行されており、出発便に対しては、空港におよそ1時間前に到着するダイヤが組まれている。庄内交通は山交バスと同じく地域連携Suicaの「チェリカ」を導入しており、全国相互利用ICカードも利用可能。日本海に沈む夕日を思わせる真っ赤なバスに乗り込み、空港を目指していく。
 駅前から乗車する人が多い空港連絡バスだが、この路線ではエスモールバスターミナルから乗車する人の方が多かった。バスターミナルの方が、送迎ついでに買い物ができ、屋内で快適にバスを待てるためだろう。バスは8人ほどの乗客を乗せてバスターミナルを発車すると、直後に鶴岡駅前に停車。ここで2人を乗せた。
 
乗車記録 No.19 庄内交通 庄内空港連絡バス 庄内空港行 エスモールバスターミナル→庄内空港
 
 鶴岡駅を発車すると、バスは羽越本線を跨ぎ、その後、駅の北側に広がる工業団地を横切っていく。鶴岡は工業都市としての一面も持っており、道沿いにはOKIサーキットテクノロジー、JVCケンウッド、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングなど、名の知られた企業の工場が並んでいる。工業団地内では中央工業団地東口、鶴岡中央工業団地の2つのバス停に停車するが、この便では乗り降りする人の姿はなかった。こうした工場と関東方面を結ぶ移動にも、庄内空港が利用されている。
 工業団地を抜けると、バスはサイエンスパークへ立ち寄る。鶴岡中央高校に隣接するこのエリアには、慶應義塾大学や国立がん研究センターの研究施設が立地している。道路の向かい側には、「ショウナイホテル スイデンテラス」という、かなりモダンなデザインのホテルも建っていた。
 
 サイエンスパークでも乗降はなく、バスはそのまま国道7号線の鶴岡バイパスへと入る。バイパスはその先で、鶴岡市街地の東側からやってくる国道112号線と合流し、酒田方面へ向けて北上していく。バスも国道7号線に沿って北へ進み、周辺に田園風景が広がる中を快走した。
 やがて車窓の前方にイオンモール三川が見え始めると、その手前の交差点で左折。直後にイオンモール三川前バス停に停車する。鶴岡と酒田を結ぶ一般の路線バスもイオンモール三川を経由するが、そちらは施設内にバス停が設けられており、乗り継ぎ拠点としての役割も果たしている。一方、空港バスはイオンモールの敷地内には入らず、道路沿いのバス停に停車する。
 イオンモール三川前から西へ進むと、ほどなくして庄内空港に到着する。空港は庄内平野の西側、日本海沿岸部に広がる丘陵地帯の上に設けられている。日本海東北道をくぐると、やがて空港周辺に整備された公園が広がり、その先に小さなターミナルビルが姿を現した。
 バスはエスモールバスターミナルから30分ほどで終点の庄内空港に到着。ここでバスを下車し、いよいよ今回の旅も飛行機に乗り込むのみとなった。

現在は羽田線のみが就航する庄内地方の空の玄関口・庄内空港

 空港連絡バスで到着した庄内空港。ここは山形県庄内地方の空の玄関口となっている。山形県が管理する空港で、酒田市と鶴岡市の市境付近に設置されているが、ターミナルビルは酒田市側にある。山形空港と同じく「おいしい」を冠する「おいしい庄内空港」が愛称となっている。
 山形空港にはJALとFDAが就航しているが、ANAは就航していない。庄内空港はその逆で、ANAが就航し、JALは就航していない。以前はジェットスター・ジャパンの成田線やIBEXの伊丹線就航していた時期があったが、現在はANAのみが乗り入れており、すべて羽田線となっている。同じ東北の空港としては、就航会社・便数ともに秋田県の大館能代空港にも似ている。
 ANAの羽田線は現在、定期便が1日4往復設定されている。これに加えて春と秋には臨時便が1往復設定されるのが恒例となっており、この日も筆者が搭乗した便の後に、その臨時便が運航されていた。臨時便を含めて、1日5往復というのは、この規模の空港では比較的便数が多い。
 庄内地方から東京までは、地図上ではそれほど離れていないように見える。しかし、陸路で移動する場合は、特急列車で新潟へ向かい、そこから上越新幹線に乗り換える必要がある。そのため、所要時間は早くても4時間ほどかかる。一方、飛行機は搭乗時間だけで考えれば、1時間10分ほどと圧倒的な速さを誇り、空港へのアクセスや待ち時間を考慮しても、時間的に優位となっている。
 時刻表の所要時間は、1時間10分前後で設定されるが、これには滑走路・ターミナルまでの移動時間なども含まれるため、実際の飛行時間は1時間を切る。特に羽田から庄内へ向かう便では、40分ほどで到着することもある。一方、空港は日本海に面した場所に位置しており、冬は雪や風の影響を受けやすい。そのため、冬季はしばしば羽田空港への引き返しも発生している。
 
 ターミナルは三階建てで、1Fに到着口とANAのカウンター、2Fに出発ロビー・土産物店、3Fにはレストランと展望デッキが設けられている。規模は小さいものの最低限の機能は揃っている。
 空港連絡バスと飛行機の乗り継ぎには、所定で1時間の乗り継ぎ時間が確保されている。保安検査場を通過すると、すぐに搭乗口となる。そのため、慌てて保安検査を受ける必要もない。フライトレーダーで確認したところ、搭乗する便の到着機は少し早めに到着するようだった。そこで、まずは展望デッキで飛行機を撮影してから、保安検査場へ向かうことにした。
 展望デッキには、この空港のマスコットキャラクター「まめうさ」が飛行機を操縦する「まめうさ号」が展示されていた。調べたところ、人気のほどはそこそこ、といったところだろうか。しかし、このなんとも言えない表情がとても可愛らしい。

ANA羽田-庄内線に搭乗し、羽田空港へ

 やがて、着陸した羽田空港からの便を撮影し、保安検査を通過する。庄内空港からは、12時10分発のANA398便、羽田空港行きに搭乗した。先述のとおり、機材はBoeing 737-800。同機材はANAウイングスが運航しており、同社の運航乗務員で運航される。
 この路線では、Boeing 737-800、Airbus A321、Airbus A320のいずれかが使用されるのが基本となっている。ただし、多客期にはBoeing 767-300が運用に入ることもある。以前利用した北海道の中標津も似たような機材構成だったと記憶している。一つの便でも搭乗機材は日替わりで変わるが、この日搭乗した便は、Boeing 737-800での運航だった。
 
乗車記録 No.20 ANA398便 庄内空港→羽田空港 Boeing 737-800
 
 11時50分頃から搭乗が始まり、筆者も機内へ。この日の搭乗率は5~6割といったところで、さほど混雑してはいなかった。搭乗はスムーズに進み、12時5分にはプッシュバックを開始。真っ昼間の飛行機に搭乗するのは、かなり久しぶり。基本、飛行機は行き帰りで使うことが多く、正午前後の便に乗る機会はなかなかない。
 搭乗機がプッシュバックを始める直前には、隣のスポットにプライベートジェットが到着。フライトレーダーで確認すると、静岡空港を拠点とするフジビジネスジェットの機体だった。
 庄内空港の近くには、エプソン東北の工場がある。エプソンは長野県諏訪市に本社を置く企業で、庄内空港と信州まつもと空港の間には、社員専用のビジネスジェットが運航されている。隣に到着した機体は、どうやらその便に使用されているものだったらしい。一般の交通機関で山形から長野間というのは、おそらく九州を目指すより時間的には遠い。
 
 プッシュバックを終えると、搭乗機は滑走路27へ。庄内空港には誘導路がないため、滑走路上で転回し、まもなく庄内空港を離陸した。
 この日は海側へ向かっての離陸となったため、機体は一旦日本海上へ出て旋回。空港の展望デッキからも見えていた高館山という山の上を飛び越える形で、先ほどまでいた鶴岡市街地方面へ向かっていく。機窓には、空港周辺に広がる庄内砂丘の海岸線が見えた。エメラルドグリーンの日本海がとても美しかった。
 
 海の上で旋回し、鶴岡市街地の真上を飛行しながら高度を上げていく搭乗機。やがて機窓には庄内平野の田園風景が広がり始める。一面に水の張られた水田が広がる光景は、平野でありながら湖の上を飛んでいるかのような瑞々しさがあった。夏には一面が緑に覆われ、晩夏には黄金色に染まり、冬には雪景色が広がる。また時期を変えて、この空港を利用するのも楽しいだろう。
 
 やがて庄内平野も終わりとなり、搭乗機は山間部へと向かっていく。この先は月山の近傍を通り、山形盆地、奥羽山脈を越えて、宮城県の上空へと向かう。離陸から10分もしないうちに山形市上空に差し掛かり、機窓からは雲の隙間に山形空港や天童市街地が見えていた。
 フライトレーダーを見ると、後方からは秋田空港を離陸したANAとJALの便も飛行していた。搭乗機はそれらの前方を進み、蔵王山の上空を越えると、宮城県白石市から福島県上空へと入っていく。ここまででおよそ12分。ここ3日間で寄り道しながら旅してきた場所を、搭乗機は猛烈な勢いで引き返していく。
 
 短距離路線のため、飲み物のサービスはないものと思っていたが、通常どおりサービスが行われた。プレミアムクラスでは食事の提供もあるらしい。ただし、ゆっくり食べている時間はないだろう。筆者もアップルジュースを受け取り、機窓からの景色を眺めていた。
 福島県上空に差し掛かると、北海道方面からの航路へ合流し、以後は北日本各地から羽田空港へ向かう便の列に加わっていく。このあたりで搭乗機は巡航高度に入るものの、高度を維持する時間は長くない。短い飛行時間ながら、操縦室からの放送も実施され、羽田空港には5分ほど早く到着する見込みであることが案内された。その後、福島県南部に差し掛かる頃には、早くも羽田空港へ向けて降下を開始する。機窓には雲が多かったものの、浜通りの海岸線を見ることができた。
 福島県の南部付近では、東北・北海道から羽田空港へ向かう飛行機と、韓国方面から成田空港へ向かう飛行機が交差する。フライトレーダーを見ていると、近くにはモンゴルのウランバートルから飛来したMIATモンゴル航空や、イスラエルのテルアビブから飛来したエル・アル航空の機体も飛行していた。エル・アル航空の機体が見えないかと機窓から探してみたが、残念ながら雲に隠れて見ることはできなかった。
 
 やがて搭乗機は茨城県上空に差し掛かる。まだ庄内空港を離陸して20分ほどしか経っていないのに、もう関東の上空へと戻ってきた。改めて、飛行機の絶大さを実感する。羽田空港へのフライト時間で言えば、このあたりが折り返し。フライト時間の大半は関東上空を飛行している。
 やがて、機窓には、ちょうど1年前に乗車した水郡線の沿線が見え始めた。常陸大宮や常陸太田などの市街地を眺め、昨年の旅で訪れた地域を眼下に飛行する。久慈川近くの丘陵地帯に広がる市街地。昨年旅した時の車窓を思い返しながら、改めて空の上から地形を観察するのも楽しい。遠くには九十九里浜の海岸線が、きれいな弧を描いているのも見えた。
 
 茨城県内を縦断しながら、徐々に高度を下げていく搭乗機。百里基地・茨城空港を遠くに眺めると、やがて土浦市上空に差し掛かり、広大な霞ケ浦を見渡す。やがてシートベルトサインが点灯し、着陸態勢へと入った。
 この日、この時間帯の羽田空港は北風運用となっており、搭乗機は滑走路34Rから着陸する。北風運用時は、基本的に34Rを北日本・北米方面からの便、34Lを西日本方面からの便が使用する。北日本方面からのANA便を利用する際には、今日のような運用だと到着する滑走路とターミナルが隣接しているため、スムーズに到着できる。
 
 利根川上空を通過すると千葉県内へ入り、印西市、八千代市、千葉市の上空を飛行。千葉ニュータウンや千葉市街地、おゆみ野、ちはら台などを機窓に眺めながら進んでいく。この日は低い高度に雲があり、房総半島上空ではその影響を受けて、小刻みな揺れを伴いながら降下していった。袖ケ浦上空に差し掛かると旋回し、いよいよ羽田空港の滑走路へ近づいていく。
 
 木更津の上空を飛行して、臨海部のコンビナートを眺めると、いよいよ東京湾に差し掛かる。西日本方面からやってきたスカイマーク機と並ぶ形で東京湾上空を飛行すると、やがてD滑走路が姿を現す。
 まだ九州への旅路が残っているとはいえ、いつも旅の終わりに着陸する瞬間は、とても切ない気持ちになる。今回もまた、一つの旅が終わる。まだ旅を続けていたいような、でもそろそろ帰りたいような。そんな気持ちが交錯する。
 ローマへの長旅を目前に控えて待機するITAエアウェイズのAirbus A350-900の横を通り過ぎ、搭乗機は34Rへ着陸。庄内空港からわずか46分のフライトが、ここで幕を閉じる。あっという間の空の旅。雲が多かったものの、各地の景色を眺めながらの楽しい時間だった。
 
 到着を告げる機内放送では、旧サテライトとの接続部にある50番スポットに到着予定と案内されていた。しかし、まだ出発便の出発に時間がかかると判断されたためか、誘導路上でわずかに停止。その間に到着スポットが再調整されたようで、最終的には第2ターミナル本体の57番スポットに到着。最終的には定刻より15分ほど早い到着となった。
 羽田空港に到着し、東北の旅を終える。いつもなら、ここで九州方面の便へ乗り継ぎ、帰宅の途につく。今回も当初はそのように手配していたのだが、ちょっとした個人的な都合から、新幹線で帰ることにした。
 新幹線の発車時刻までは2時間ほど時間があったため、到着後は展望デッキへ向かい、しばし飛行機を撮影した。この日は滑走路運用との相性もよく、デルタ、ユナイテッド、アメリカンというアメリカ3大航空会社の便を撮影することができた。しばらく撮影を楽しんだ後、モノレールと京浜東北線の快速列車を乗り継いで東京駅へ。その後は、東海道・山陽新幹線の「のぞみ」に乗り込んで九州へ戻り、今回の旅を終えた。

おわりに

 仙台周辺の近郊路線と、今年1月に運転を再開した陸羽西線に乗車した今回の旅。東京駅からE2系「なすの」への乗車に始まり、1日目は東北本線、2日目は仙台市営地下鉄の2路線、そして3日目は陸羽西線を巡り、充実した3日間を過ごすことができた。
 前回の札幌の旅と同様、仙台では地下鉄への乗車とともに路線バスも活用しながら、仙台という街を探訪した。観光旅行ではなかなか訪れる機会のない場所にも足を運び、仙台が「杜の都」と呼ばれる所以や、街の構造を改めて知ることができた旅だったように思う。
 また最終日には、長らく運休していた陸羽西線に乗車し、改めて最上川の景色を列車から眺めることができた。一度は代行バスで通過した場所だっただけに、数年前の旅を思い返しながら、最上川の雄大な流れと庄内平野の美しい田園風景を楽しむことができた。
 東北地方の鉄道路線は、廃止が決まった津軽線の蟹田~三厩間、そして今後の在り方が検討されている米坂線の今泉~坂町間を除き、これですべて乗り終えることとなった。五能線や只見線、山田線など、美しい車窓を持つローカル線が数多く存在する東北地方。一つ一つの旅で、車窓や降り立った駅の周辺に各地の風情を感じ、様々な観光地を訪ねると同時に、航空路線やバス路線も活用しながら旅をしてきた。今後は路線バスにもさらに目を向け、よりディープな東北の旅にも出かけてみたいと思っている。
 さて、前回の旅で北海道、そして今回の旅で東北地方の鉄道路線を完乗し、国内の鉄道路線巡りもいよいよ終わりが近づいている。今回の旅を終えた時点で、長期不通路線を除く未乗区間は5区間となった。このうち、純粋な未乗路線は2路線、区間変更に伴う未乗区間が2区間、そして長期不通から復旧する区間が1区間ある。今年の後半は、これら5区間をすべて巡り、営業中の路線の完乗を達成したいと思っている。
 次の旅の目的地は中国地方。昨年開業した広島電鉄の駅前大橋ルートへの乗車を組み込みながら、周辺のバス路線にもいくつか乗車する旅を検討している。夏真っ盛りの旅に備えて、まずは今から暑さに慣れていきたい。

次話

その他の東北地方の旅行記

今回初めて乗車した路線・区間

【航空路線】
ANA 庄内空港 - 羽田空港
【鉄道路線】
JR東日本 東北本線 福島-槻木間
JR東日本 東北本線支線(利府支線) 岩切-利府間
仙台市営地下鉄 南北線 泉中央-富沢間
仙台市営地下鉄 東西線 八木山動物公園-荒井
JR東日本 陸羽西線 新庄-余目間
【バス路線】
中国JRバス 「グランドリームエクスプレス広島号」 広島駅新幹線口-東京駅日本橋口
仙台市営バス [25] 愛子駅-泉中央駅
仙台市営バス [Z60] 長町駅東口-八木山動物公園駅
仙台市営バス [K512] 荒井駅-仙台駅前
山交バス 新庄-仙台線「48ライナー」 仙台駅前-新庄駅東口
庄内交通 庄内空港連絡バス エスモールバスターミナル-庄内空港