【旅行記】東北鉄道大周遊2023~福島交通飯坂線に乗車する~
前話
東北本線から阿武隈急行線への直通列車に乗車し、その後梁川駅で列車を乗り換えて、福島駅までやってきた。ここからは福島交通飯坂線に乗車して飯坂温泉との間を往復する。その後、東北本線を少しだけ上って郡山駅へ移動。郡山駅からバスで福島空港へ向かい、福島空港から空路で東北をあとにする行程だった。今回の旅も残り数時間で終わりとなるが最後まで、東北の鉄道路線を楽しんでいこうと思う。
福島駅新幹線ホームで小休憩

飯坂線は比較的運転本数も多く、時間的にも余裕があったので、入場券を購入して、JRの改札内へと入ってみた。これまで何度か乗車したことのある東北新幹線だが、よくよく考えると通過線のある駅のホームには、まだ行ったことがなかった。東北新幹線では、宇都宮~盛岡間では国内の新幹線で最速となる320km/h運転が行われている。福島駅もこの区間内に入っている。とは言え、あまり列車が走っていない時間帯だったようで、次の通過列車まで20分ほど時間があった。その間に山形方面からきたつばさと仙台からきたやまびこが奥のホームで併結し、その隣では盛岡行のやまびこが発車していった。東北新幹線から奥羽本線へのアプローチ線は、現時点で新幹線の下り線側にしか設置されておらず、東京方面への上り列車は、新幹線の下り線との平面交差が発生する。これがダイヤ構成上のネックとなっていて、現在福島駅では新幹線の上り線側にもアプローチ線を作る工事が行われている。やまびこの発車から10~15分後にはやぶさ・こまちが通過していった。確かに山陽新幹線の300km/hより速く、とても迫力があった。
福島交通飯坂線で飯坂温泉へ
さて、福島駅で新幹線の通過を見学した後は、再び乗り鉄旅を再開する。福島駅から乗車したのは、この駅と飯坂温泉駅を結ぶ福島交通飯坂線である。福島交通は福島県内の中通りエリアで、路線バスを運行する会社だが、1路線だけ鉄道路線を運行している。それがこの飯坂線である。飯坂温泉は秋保温泉、鳴子温泉と並ぶ東北三大名湯の1つに数えられる有名な温泉。この路線は福島駅から飯坂温泉へ向かう観光客を運と同時に、福島市の北側エリアの地域の足となっている。

新幹線のホームがある西口から、地下連絡通路を通って、阿武隈急行と福島交通の福島駅へ戻った。梁川駅で購入した飯坂日帰り切符を改札で提示して、飯坂線の列車の到着を待った。
かなり折り返しの時間がシビアに設定されているようで、発車時刻の2分前に飯坂温泉からの普通列車が到着。乗客が入れ替わるとすぐに発車時刻となり、慌ただしく発車時刻となった。現在、飯坂線で活躍するのは、2両編成の1000系電車。もともとの東急1000系電車で、中間車を改造するなど大幅な改造が行われて福島で活躍を続けている。同じような改造車は飯坂線だけでなく、島根県の一畑電車や長野県の上田電鉄などで活躍している。飯坂線は古くから東急のお下がり車両を走らせており、かつては青ガエルで知られる5000系なども活躍していた。
乗車記録 No.22
福島交通飯坂線 普通 飯坂温泉行
福島→飯坂温泉 1000系

福島駅を出た列車は、しばらくの間東北本線の線路と並走する。一駅先の曽根田駅はイオンシネマなどが入る大きな商業施設に近く、ここから乗車する人も多かった。かつて交換が可能だったこの駅は、現在棒線化されており、駅舎側の線路には飯坂線で活躍していた車両が留置されている。「電車広場おやすみ処7000」として開放されており、車内で勉強している人の姿が見えた。さらに東北本線と並走し、美術図書館前駅を出ると、その後は東北本線の線路から離れて、東北本線の線路の上を跨ぐ。その後は概ね福島県道3号線と並走しながら飯坂温泉へと向かっていく。

ずっと道路が並走するのは、この路線がかつて路面電車の路線として作られたことに由来する。飯坂線の歴史は古く、路線の大部分が開業したのは大正13年だった。車窓には福島市郊外の住宅街が広がる。各駅での乗り降りも多く、地元地域の足として使われている様子が伺えた。

車両基地がある桜水駅まで来ると、市街地の間に田畑が見え始める。福島市街地を迂回するように走っている東北道をくぐり、平野、医王寺と停車すると、列車は小川という川を渡った。この川を渡ると、列車は飯坂地区へと入っていく。

列車は終点の飯坂温泉駅に到着した。駅のホームは駅前の街から1段低いところにあるので、改札を出ると、階段を上って駅の外へ出る形になっている。ここ飯坂温泉も松尾芭蕉が訪れた地でもあり、駅前には、松尾芭蕉と弟子の銅像があった。駅舎の外へ出ると、なぜかうるわしの志賀高原が脳内で再生された。温泉街の街並みを見ると、少し前に訪れた長野電鉄の湯田中駅を思い出す。湯田中駅では列車到着時にこの曲がかかる。自分にとってはこのの歌というより温泉街のテーマ曲になっている。

飯坂温泉は摺上川という阿武隈川の支流の両側に温泉街が広がっている。大きな温泉旅館の建物が摺上川の目の前に建てられていて、客室からは目の前に広がる川と温泉街の景色を楽しむことができるはずである。現在も営業している旅館もあるが、中には閉館してしまった旅館もあり、そのいくつかは現在、高齢者専用の賃貸住宅として活用されているようだった。川沿いの紅葉は、真っ赤に紅葉していて、とても美しかった。

この時使用していた飯坂温泉日帰り切符は、飯坂温泉の入浴券がセットとなった切符で、温泉で切符を提示すればそのまま温泉に入浴することができる。本当は温泉に入って行きたいのだが、4日目の予定もかなり欲張っていて、これから九州まで帰らなければならないので、温泉には入らない。せっかくここまで来て、温泉に入らずに帰るのももったいないなと思っていると、足湯を発見した。ただ、タオルも何も持ち合わせていなかったので、足ではなく手を突っ込んでみた。これが想像以上に気持ちよくて、しばらく手を温めていた。前日の八戸ほどの寒さでは無いものの、この日の東北も気温は低めだったので、温泉の温かさがとても身に染みた。

ずっと温泉で手を温めていたかったが、帰りの列車の時間が近づいてきたので駅へ帰り、福島行の普通列車で福島駅に戻った。写真のように、飯坂線の車両の車端部には、暖簾が飾られている。列車でも温泉気分を少しだけ味わうことができた。
乗車記録 No.23
福島交通飯坂線 普通 福島行
飯坂温泉→福島 1000系
奥羽本線のゼロキロポストを見に行く

いよいよ、次の列車が今回の旅で乗車する最後の列車となった。福島からは東北本線に乗車し、福島空港行きのバスが発着する郡山駅へ向かう。福島から郡山までの東北本線はこれが初めての乗車。東京から盛岡まで続く長大な東北本線、一回で乗り通す旅もいつかはやってみたいが、乗りつぶしはコツコツと行っている。
福島から郡山間の日中の普通列車は1時間に1本しかない。福島も郡山も福島県を代表する都市なので、もう少し本数があってもいい気がするが、両都市間の移動は基本新幹線を使えということだろう。列車の発車までまだ30分以上時間があるものの、特にやることがなかったので、ホームで列車を待っていると、あることを思い出した。

そういえば、福島駅は東北本線と並ぶ東北地方の大幹線、奥羽本線の起点だった。奥羽本線は福島駅から山形駅、新庄駅、秋田駅、弘前駅を経由して青森駅まで続く路線である。現在は青い森鉄道線になっているが、ここで別れた東北本線とは青森駅で再び出会う。起点ということは、ゼロキロポストがあるはず。奥羽本線(山形線)のホームへ行くと、ゼロキロポストがしっかり立っていた。
福島駅は、かつて秋田方面に向かう列車が東北本線から奥羽本線に入る分岐点だった。現在の奥羽本線は、福島から新庄までの区間はミニ新幹線である山形新幹線の列車が走行するため、線路の幅が新幹線と同じ標準軌になっている。そのため、福島から青森までの路線だが、事実上新庄駅で一区切りとなる。JR東日本の案内上も奥羽本線と案内されるのは、新庄から先の区間であり、福島から新庄間では奥羽本線の名前は使われない。この区間では、新幹線列車を山形新幹線、普通列車を山形線と案内している。今となっては福島から山形・秋田を経由して青森まで続く線路が1つの路線であると言うことを知っている人の方が少ないかもしれない。奥羽本線の0キロポストは山形線の普通列車が使うホームの脇にひっそりと立っているが、ここが東北の幹線路線の一つの起点であることを示している。
東北本線の普通列車で福島から郡山へ

さて、奥羽本線のゼロキロポストを見て時間を潰していたら、東北本線の普通列車の発車時間が近づいてきた。東北本線のホームへ戻って旅を再開する。福島から乗車したのは、東北本線普通列車新白河行き。701系4両編成での運転だった。東北本線の福島宮城エリアの普通列車には数回乗っているが、未だE721系に乗車できていない。701系は秋田や盛岡でも乗車できるので、できればE721系に乗りたいが、こういう時は大体自分が乗りたいと思っている車両とは別の車両が来ると相場が決まっている。(写真は郡山駅で撮影したもの)
乗車記録 No.24
東北本線 普通 新白河行
福島→郡山 701系

列車は福島駅から約50分で、郡山駅に到着した。乗車した。列車は新白河行きなので、ここは終電ではないが、郡山で30分ほど停車するので、ほとんどの乗客が下車していった。東北本線はこれで東京~福島間、槻木~一ノ関間、花巻~盛岡間が乗車済みとなり、残す未乗区間は福島~槻木間と一ノ関~花巻間となった。

郡山駅に来たのはこれが2度目。はじめての訪問は4年前の夏だった。この時は東京に住んでたので、日帰りで訪れて、ここで新白河からの東北本線の普通列車から磐越東線の普通列車に乗り換えた。当時、人生初めて東北を走る列車と出会い、とても感動したのを覚えている。あれから4年が経ち、多くの東北の鉄道路線に乗車できることを感謝しないといけないと思う。写真は出発を待っていた福島行の普通列車。そう、この車両に乗りたいといつも思っているのだ。次回東北に来た時こそは、この車両に乗れることを願いたい。

郡山市は福島県で1番大きな都市であり、東北地方でも仙台市に次ぐ規模を誇る都市である。県庁所在地である福島市よりも都市の規模が大きいため、福島県内ではこれら公的機関を郡山市に移そうと言う動きが度々あると言う。駅前の風景を見るだけでも、街の規模の違いは歴然としている。駅前を歩く人の量も全く異なっていて、路上ライブをしている人がいたり、どこかの政党が演説をしていたり、さらにはヨドバシカメラの音が聞こえてきたいと都会の喧騒感じる。福島駅の閑静な駅と言う印象とは、全く異なる雰囲気である。
郡山からバスで福島空港へ移動し、東北を発つ

郡山駅からは、バスに乗車して福島空港へ向かった。当初の計画では、仙台空港から帰路につく予定であったが、この日仙台市では、有名な女子駅伝の大会が行われていて、仙台空港を夕方に出発する航空機の運賃は、軒並み高騰していた。そんなわけあって、今回はちょっとマイナーな福島空港を使うことにした。福島空港は郡山市に隣接する須賀川市にある空港で郡山駅から空港バスが発着している。郡山駅から福島空港までの所要時間は45分。空港バスの運行を担当するのは、先ほど乗車した飯坂線を運行する福島交通である。
郡山駅はこの辺りのバスターミナルにもなっており、多くの路線バスや高速バスの発着している。高速バスはへ仙台や東京に向かうバスのほか、いわきや会津若松へ向かう県内路線も多い。福島空港行のバスの列に並んでいると、同じのりばに東武バスが到着。浦和美園駅を経由して、東武スカイツリーラインの越谷駅まで向かう路線のバスで、そんな需要があるのかと思ったが、意外にも多くの乗客が乗り込んでいて、北関東エリアへの移動のほか、浦和美園から埼玉高速鉄道などを利用して都心向かう需要が一定数あるようだ。このバスの発車後に福島空港行きのバスがやってきた。早速乗り込んで福島空港へと向かった。
乗車記録 No.25
福島交通 リムジンバス 福島空港行
郡山駅前→福島空港

バスは、郡山駅前からひたすら一般道を進み、福島空港へと向かった。車窓には水戸方面へ向かう水郡線の線路を見ることができた。
郡山駅から50分ほどで福島空港に到着。この空港へ来たのはこれが初めてだった。東北地方の空港では三沢、秋田、大館能代に次ぐ4カ所目の利用だった。ここは伊丹便と新千歳便が発着する空港で、ANAとIBEXエアラインズの2社が就航している。しかし、この日の福島空港のターミナルはやたらと混雑していた。ターミナル内で北海道のグルメフェアが実施されていたのも1つの要因だが、日本トランスオーシャン航空の那覇行きのチャーター便が出発するらしく、その便に搭乗する乗客が飛行機を待っていた。日本トランスオーシャン航空は、JALグループの航空会社で、福島空港にはJAL系の航空会社は就航していないが、こういう場合のいわゆるグランドハンドリングはANAが委託しているところに委託されるのだろうか。そんなどうでもいいことを考えながら、帰りの飛行機の搭乗開始を待った。

福島空港から搭乗したのはANAの伊丹行き。ボンQの愛称で親しまれているDHC8-Q400での運航だった。この機材には過去に1度だけ搭乗したことがあったが、その時は終始雲の中を飛行していたため、機窓を楽しむことができなかった。今回は福島空港周辺に若干の雲が立ち込めていたが、高崎上空に差し掛かる頃には雲が無くなり、その後は伊丹まで夜の機窓を楽しむことができた。ANAのボンQは数年後に引退することがすでに発表されている。運よくANA Future Promiseの特別塗装機に当たった。小型機材でこの塗装が施されているのは、この機体だけ。伊丹空港到着後は自分を含めて多く人が振り返って写真を撮っていた。伊丹空港ではそのまま九州方面の飛行機へ乗り継ぎ、九州へと戻り、今回の旅の全日程が終了した。
終わりに
前回に引き続き訪れた東北地方。前回は北東北をメインに旅したが、今回は秋田県を除く各県と新潟県を周遊する旅程となった。災害で一部区間で運休中の米坂線と、工事で計画運休している陸羽西線については代行バスの乗車となったものの、東北各地のローカル線に乗車することができ、とても充実した4日間を過ごすことができた。山田線、釜石線、大船渡線という東北本線と三陸を結ぶ2つのローカル線は以前から乗車してみたいと思っていた路線だった。前回の旅と合わせて、3路線全てに乗車することができ、東北での目標の一つを達成することができた。
季節は冬が始まろうとしていた。釜石線では雪が降っていて、冬の東北の景色も楽しむことができた。現時点ではまだ秋しか旅したことのない東北地方。今後は秋以外の季節の景色というのも見てみたいと思う。東北の乗りつぶしの旅はこれからも続いていく。来年もまた東北には赴くことになるが、次は季節を変えようと思っている。また一味違った東北の景色を見れる日を楽しみにしている。
・今回初めて乗車した路線
【鉄道路線】
JR東日本 米坂線 米沢-坂町(今泉-坂町間バスによる代行輸送)
山形鉄道 フラワー長井線 今泉-長井間
JR東日本 陸羽東線 新庄-小牛田間
JR東日本 東北本線 小牛田-一ノ関間
JR東日本 大船渡線 一ノ関-気仙沼間
JR東日本 釜石線 釜石-花巻間
JR東日本 東北本線 花巻-盛岡間
IGRいわて銀河鉄道 いわて銀河鉄道線 好摩-目時間
青い森鉄道 青い森鉄道線 目時-八戸線
JR東日本 東北本線 岩沼-槻木間
阿武隈急行 阿武隈急行線 槻木-福島間
福島交通 飯坂線 福島-飯坂温泉間
JR東日本 東北本線 福島-郡山間
※陸羽西線は計画運休路線のため、初めて乗車した路線にカウントしなかった
【バス路線】
福島交通 リムジンバス 郡山駅前-福島空港
【航空路線】
ANA 福島空港-伊丹空港
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