【旅行記】秋田・岩手鉄道ぶらり旅~東日本急行中尊寺-仙台線とJAL仙台-福岡線で九州へ~
東日本急行の高速バス仙台-一関・中尊寺線に乗車する

盛岡から東北本線の普通列車を一ノ関まで乗り通し、岩手県の鉄道路線の完乗を達成した3日目。一ノ関到着後は中尊寺観光へ出かけ、今回の旅の目的も全て果たすことができた。中尊寺からは高速バス、列車、飛行機を乗り継いで九州へ戻った。
今回は仙台空港から東北を発つ。中尊寺から仙台空港へは、路線バスで一ノ関へ行き、そこから新幹線を使って仙台駅へ行って、さらに仙台空港アクセス線へ乗り換えるのがおそらく一番メジャーな行き方なのではないかと思う。しかし、実は中尊寺から仙台駅へは高速バスでも行くことができる。今回はいい感じに乗り継げることが分かったので、この高速バスを使って、仙台駅まで行ってみることにした。

中尊寺と仙台を結ぶ高速バスは、仙台市に本社を置く東日本急行が運行している。同社は仙台と宮城県内、岩手県内各地を結ぶ高速バスを運行するバス会社で、代表的な路線にこれから乗車する仙台-一関・平泉線、仙台-栗原線、仙台-登米線などがある。また、仙台-盛岡間の高速バス「アーバン号」の一部も運行を担当している。筆者もこの旅を企画した際に初めてこのバス会社のことを知った。宮城県・岩手県内のバス会社の共同出資により設立されたバス会社で、成り立ちは九州で言うところの九州急行バスに似ている。
仙台-平泉線は、仙台-一関線の区間延長という形で運転されており、観光に使いやすい日中の3往復のみが中尊寺まで足を延ばしている。時期により運転日が異なり、春から秋にかけては毎日運転されるが、オフシーズンとなる冬季は、土休日のみの運転となっている(なお、この場合も仙台駅前-一関駅前の区間は毎日運行される)。中尊寺では、岩手県交通の路線バスと同じバス停発着となる。背後にある中尊寺の第二駐車場が折り返しの待機所になっているようで、駐車場には2台のバスがいて、折り返しを待っていた。
筆者はこれまで、東北地方で高速道路を経由する空港バスには乗車したことがあったものの、都市間を結ぶ高速バスには乗車したことがなく、この路線が初めての利用する東北地方の高速バスとなった。

直前に発車していった一関駅前行きの路線バスは、15人くらいが乗車して混雑していたが、仙台行の高速バスに乗車したのは、自分一人だけだった。バスは中尊寺から平泉駅前にかけて続く桜並木の下を通り抜けて仙台へ向け走り出した。平泉町内では中尊寺の他、平泉駅前にも停車する。当路線の平泉バス停は、駅ロータリーではなく、県道沿いにある。この日は乗車客がおらず、そのまま通過となった。

その後、バスは平泉町を出て、国道4号線経由で一関駅前へ向かった。岩手県交通の路線バスが山ノ目駅前を経由する一方で、こちらはバイパスを経由して一関の市街地へ入る。その後、国道342号線へ左折して一関駅前へ。往路の路線バスとは違った経路で一ノ関駅へ戻っていく。磐井川を渡ると、バスは一関駅前に到着した。

バスは中尊寺から15分ほどで一関駅前に到着。ここでは数分停車し、4人の乗客を乗せた。一関駅前から中尊寺まで延長運行するのは3往復だけだが、ここから先の区間は1時間に1本が運転されている区間に入っていく。一ノ関から仙台までの高速バスの所要時間は1時間30分で、運賃は1,700円。最大のライバルである新幹線は、30分強で両区間を結ぶが、費用は自由席でも高速バスの2.5倍かかる。一方、在来線は高速バスと所要時間と運賃が変わらないものの、日中は途中の小牛田で乗り換えとなるのでちょっと不便。高速バスは、新幹線よりも時間はかかるものの、在来線移動より快適で、運賃も安いのが大きな利点。この便は日中の便なので利用客は少なかったが、路線自体の利用者は多いらしい。

一関駅前を発車すると、少しだけ来た道を戻って再び磐井川を渡り、その後は国道342号線経由で一関ICへ向かう。途中では合同庁舎前とイオン一関前に停車した。合同庁舎前で1名が乗車。一方、イオン一関前では乗車はなく、この便の乗客は6名で確定となった。バスはロードサイドにチェーン店が並ぶ国道を進み、イオン一関店の先で一関ICへ入った。
川口JCTから青森ICまで続く東北自動車道。筆者はまだ関東圏の区間を含めて、一区間も利用したことがなく、一関ICがはじめて利用するICとなった。東北道で初めて利用するICが一関というのは、正直自分でも予想していなかった。これから東北地方は高速バスを利用する機会も増やしていきたいと考えているので、この道を通る機会も増えると思う。

一関ICで東北道に入ったバスは、ここからバスは仙台市の仙台宮城ICまでこの道を走っていく。一関の市街地と別れた後は、しばらく山間の景色の中を走り、その途中で宮城県との県境を跨いだ。県境で接するのは栗原市。若柳金成ICの手前から急に景色が開けてきて、バスはしばらく広い平野の中を走っていく。反対側には栗駒山が見えていた。

志波姫PAを通過すると、開けた景色は一旦終わり、再び山間の景色を進んでいく。その後、長者原SAを通り過ぎると、バスは大崎平野へ出た。遠くには古川の街が見え、一昨年乗車した思い出の陸羽東線と交差した。この仙台-一関・平泉線は、トイレなし車両で運転される。1時間半~2時間と乗車時間は比較的短いが、利用客に配慮して途中の三本木PAで、挙手制のトイレ休憩が行われる。九州では見ない降車ボタンを押せば、PAに停車するしくみ。この便では誰も降車ボタンを押さず、そのまま通過となった。

大崎平野を抜けると、再び少し山間の景色の中を走行する。やがてバスは富谷JCTを通過した。富谷市は仙台市の北に位置するベッドタウン。東北道はここで仙台東部道路と繋がる仙台北部道路と接続している。利府で接続する仙台東部道路は、仙台空港の近くを通り、そのまま常磐道に変わる。道路標識には仙台空港のほか、常磐道の”いわき”の文字もあった。
東北道はこの先、仙台市街の西側を迂回する形で走っている。ここからは両側にニュータウンが広がる中を進んでいく。高速道路は一段低い場所を走っていて、ニュータウンはよく見えない。しかし、仙台市郊外のシンボル、仙台大観音の背中が見えていた。

仙台宮城IC手前の東北道は、少し標高の高い場所を走っている。こちら側は切通の斜面しか見えないが、反対側の眺めはとてもよかった。その後、下り坂を進むと、昨年の旅で乗車した仙山線と交差し、広瀬川を渡る。その直後にある仙台宮城ICでバスは東北道を下りた。
仙台と各地を結ぶ高速バスが集結する仙台宮城IC。次に使うのはどの高速バス路線になるだろうか。東北地方の乗り鉄もひと段落となる中で、これからはこのICもよく使うことになるのではないかと思う。

仙台宮城ICから東北道を流出し、国道48号線に入ると、そのまま青葉山トンネルへ。このトンネルがある仙台西部道路のおかげで、東北道と仙台市街の間もムーズに行き来できる。ICを降り、トンネルをくぐって街中に入るこの道路、規模は違うが鹿児島の武岡トンネルに似ている。青葉山トンネルを出ると、車窓には広瀬川が広がる。その先、もうひとつトンネルを抜けると、この川を渡った。この付近は道路が二層式になっていて面白い。仙台市街地側では2つ出入口があるが、バスは1番先の出口で仙台市街地へ出た。

こうやって仙台宮城ICから道路を走って仙台市街地に入ってくると、仙台の街は丘の上にあることがよくわかる。トンネルを出て、仙台市街地に顔を出すと、終点の仙台駅はもうすぐそこ。仙台駅始発のバスは一回も曲がることなく仙台西部道路へ入るが、バスは青葉通り沿いのバス停が終点のため、広瀬通り交差点で右折後、すぐに左折して青葉通りに入った。初めて仙台へ来た時は、あおば通駅前のホテルに宿泊したので、車窓の景色が懐かしかった。中尊寺から1時間50分、バスは終点の仙台駅に到着。運賃1,900円を支払って、バスを下車した。
仙台空港アクセス線の希少な快速列車に乗車

約5ヶ月ぶりの仙台駅。前回は伊丹から仙台空港へ飛んだあと、仙台空港アクセス線でここへ来て、仙山線で山形へ向かった。今回は逆にここから仙台空港アクセス線で仙台空港へ向かっていく。今回もまた仙台は素通りとなる。東北地方の鉄道路線は、道路工事で長期運休になっている陸羽西線を除けば、仙台近辺の路線を残すのみとなった。仙台にはその路線たちを乗りつぶしに、また近いうちに来ることになると思う。この日駅舎内では九州フェアをやっていた。これから九州へ帰るのに、地元の名産品が売られているのを見かけた。

仙台からは14時50分発の仙台空港アクセス線、快速仙台空港行きに乗車。1日1往復の貴重な快速列車を仙台空港まで乗り通した。初めてこの路線に乗車した5ヶ月前の山形旅の旅行記では、この路線を紹介した際に、仙台空港アクセス線には快速列車が運転されていることについては述べたが、1日1往復しかなく、それを目的に乗りに来ないと乗ることが難しいと書いた。しかし今回、狙ったわけでもないのにこの快速列車の運転時間に当たった。
仙台空港アクセス線の快速列車の途中停車駅は名取のみ。空港までの所要時間も普通列車より10分ほど早い15分となっている。途中駅での行き違いの停車もないのでスイスイ進む。割と時間がかかるイメージがあった仙台空港アクセス線も、快速列車だとその印象がガラッと変わる。この時間の仙台空港は、台湾や香港方面への国際線も出発便が連続する。そのため訪日観光客の姿も多かった。

中尊寺から高速バスと仙台空港アクセス線の快速列車を乗り継いで、予定通り仙台空港に到着した。出発まではまだ少し時間があったので、前回は行かなかった展望デッキへ行ってみた。駐機場では、JAL(J-AIR)の伊丹行きがプッシュバックしていた。国内線では伊丹、関西、福岡、那覇、広島、神戸、中部、札幌、新潟(季節限定)が就航している仙台空港。小型機の発着が多く、国内線で最も大きいのは、ANAのBoeing 767-300である。一方、国際線は台北、香港線などが就航。こちらはAirbus A330-300や-900が就航している。
JAL(J-AIR)の福岡-仙台線で福岡空港へ
仙台空港からはJALの福岡空港行きに搭乗した。福岡-仙台線は現在JALとIBEXの2社が運航している。JALはJ-AIRの運航で1日2往復、IBEXはANAとコードシェアを行う形で1日5往復の運航となっている。今回は特典航空券を活用し、JAL便の方に搭乗した。九州と東北を結ぶ航空路線は、福岡-仙台線といわて花巻線の2路線しかなく、とても貴重である。このうち福岡-仙台線は、九州と東北の中心都市を結ぶ路線だけあって比較的需要が高い。旅行日後の2025年5月にはスターフライヤーが2025年10月の新規就航を発表した。おそらくIBEX便の一部がスターフライヤーに置き換わるのではないかと思う。

J-AIRが運航するJAL便は、2往復ともEmbraer E190が投入されている。同社のE190は2016年5月に伊丹-鹿児島線で就航し、その後7月から伊丹-仙台線にも投入された。仙台空港は、E190の就航後早い時期に投入された空港の一つである。これから搭乗する福岡-仙台線には2017年12月に投入。以後は基本的にこの機材がほぼ専属で使用されている。現在、JAL系は仙台空港で、福岡、伊丹、新千歳の3路線で就航しているが、全てがJ-AIRの運航となっている。そのため、この空港にやってくるのはエンブラエル機のみ。通常はJAL本体の機材はやってこない。

この日は西日本で天気が悪かったが、前便も定刻通りに到着。搭乗便も定刻より少し早めにドアが閉まり出発となった。JAL便としては2往復しかないため、日によっては混雑することもあるが、この日は6割程度の搭乗率で、後部の方は空席が目立った。台湾からのスターラックス航空の到着を待った後、プッシュバック。その後滑走路09側へ移動し、インターセクションデパーチャーで定刻の出発時刻の3分後となる16時13分に離陸した。

太平洋上へ出たのち、旋回した搭乗機。その後は東へ向かいながら高度を上げた。仙台から福岡への便は、まず新潟へ向かい、そこから日本海沿岸を辿る形のフライトとなる。内陸へ入ると、阿武隈急行が走る丸森町などを見ながら東へ進んだ。やがて眼下には山形県米沢市周辺が見えた。奥には最上川の源流部である山形県と福島県の県境の山々が見えていた。

米沢盆地を通り過ぎると、今度は雪を積もらせた急峻な山が見え始めた。山形県と新潟県の県境に位置する飯豊山を中心とした飯豊山地の山々である。搭乗機は米坂線ルートで新潟へ向けて飛んでいく。まだ高度は低いので、空から見る雪山がとても美しかった。

その後は新潟県の上空を飛行し日本海へ。そこからは北陸、山陰と日本海沿岸を沿う形で九州へと飛行した。新潟県から先は雲が多く、地上が見えるタイミングは少なかった。写真に見える雪を積もらせた山は妙高山。妙高山の麓の能生や、近くの糸魚川は機窓からもかろうじて確認できた。その先は雲が広がり、福岡空港着陸前まで、機に各地の景色を楽しむことはできなかった。

この日西日本は天気が悪く、福岡に近づくにつれて、軽い揺れが続くようになった。高高度にも雲があり、搭乗機は時々この雲の中へ入った。飛行高度のすぐ下に雲が広がる場面もあり、まるで生クリームの上を飛んでいるようだった。陸地は見えないが、広がる幻想的な雲を見ながらのフライトも悪くない。

1時間ほど雲の上のフライトとなり、その後島根県の上空に差し掛かったあたりで降下を開始。福岡県の沖に到達すると、しばらく雲の中を飛行し、福岡空港へ着陸。福岡は雨が降っていて、風も強かったが、さほど揺れることもなく着陸となった。

福岡には定刻より10分ほど早く着陸。雨が降る空港内を移動し、11番ゲートに到着した。これで今回の秋田・岩手を巡る鉄道旅は終了となった。まだ18時過ぎと早かったので、福岡空港到着後はすぐに地下鉄に乗り換えず、展望デッキへ。福岡空港は今年3月から2本目の滑走路の運用が開始されたが、まだその様子をこの目で見ていなかったので見学。夕方のラッシュで次々とやってくる飛行機を1時間くらい眺めて自宅へ戻った。
おわりに
秋田県と岩手県の未乗4路線を巡った今回の旅。長いこと乗りに行きたいと思っていたものの、なかなかタイミングがなかった由利高原鉄道や北上線などに乗車することができ、無事に秋田県と岩手県の全鉄道路線を完乗することができた。北東北3県の鉄道路線はこれで全て乗り終えることとなった。北東北はじめての春の旅、由利高原鉄道の終点矢島や、北上線に乗車するために訪ねた横手、そして最終日に行った中尊寺と各地見た桜がとても美しかった。同じ場所に行くにもやはり季節を変えて旅するが楽しい。唯一旅してないのが冬。運行障害が発生しやすい季節のため、なかなか乗り物目当ての旅は企画しにくい季節だが、雪見の旅を企画して冬の東北も旅してみたいと思う。東北地方にはまた次回の旅でも訪ねる。今度は南東北の未乗車路線を巡っていく。
その他の東北地方の旅行記
今回初めて乗車した路線・区間
【鉄道路線】
由利高原鉄道 鳥海山ろく線 羽後本荘-矢島間
JR東日本 男鹿線 追分-男鹿間
JR東日本 北上線 横手-北上間
JR東日本 東北本線 花巻-一ノ関間
【バス路線】
羽後交通 [急行]本荘-秋田線 秋田駅前-羽後本荘駅前間
岩手県交通 一関瀬原線 一関駅前-瀬原間
東日本急行 仙台-中尊寺・一関線 中尊寺-仙台駅前間
【航空路線
JAL(J-AIR)仙台空港-福岡空港