【過去旅回想】2022年2月 SUNQパスで行く大分国東・佐賀嬉野の路線バスの旅

SUNQパスを使い、九州再発見の旅へ
2021年から2022年にかけては、感染症禍により思うように遠出の旅ができなかったため、九州を再発見することを一つのテーマとして、まだ乗車したことのなかったバス路線に乗車し、九州各地を巡った。熊本県の天草、長崎県の西彼杵、宮崎県内など、一連の旅の終盤に出かけたもののいくつかは、この旅行記にも掲載している。しかし、ちょうど本格的に旅行記をまとめはじめた時期だったこともあり、掲載していないものも多い。今回はその中から、2022年2月に旅した大分・国東半島、佐賀・嬉野のバス旅を回想する。
九州周遊の旅には、バス路線が乗り放題になるSUNQパスという強い味方がある。路線バスだけでなく、高速バスも乗り放題になるこの乗車券には、筆者もこれまで何度となくお世話になってきた。この旅もまたそのSUNQパスを使った旅の一つだった。行程は1泊2日。博多を拠点にしつつ、1日目は東へ向かい、大分県の国東半島を、2日目は西へ向かい、佐賀県の嬉野周辺を旅した。
1日目 大分駅から国東半島を走る3本のバスで宇佐駅へ
1日目の旅程
博多BT-[西日本鉄道 とよのくに号]-要町・大分駅前-[大分交通 国東行]-国東-[国東観光バス伊美行]-伊美-[大交北部バス宇佐駅前行]-宇佐-[日豊本線普通中津行]-柳ヶ浦-[特急ソニック48号博多行]-行橋-[西日本鉄道 福岡-行橋線 西鉄天神高速バスターミナル行]-西鉄天神高速バスターミナル-[西鉄バス]-博多駅

1日目は博多を起点に、まずは西鉄の「とよのくに号」に乗車し、一路大分へ向かった。乗車したのは西日本鉄道運行便。2月中旬だったこの日は冬型の気圧配置がやや強まって、大分県の山間部では雪が降っていた。バスも若干積雪した大分道を走り大分へ。通行止めになると、初っ端から旅程が狂うところだったが、なんとか無事に大分へ辿り着くことができた。

この日は大分駅から宇佐駅まで、国東半島を走る3本のバスを乗り継ぎ旅をした。まず大分駅前からは大分交通の国大線に乗車し終点の国東へ向かった。
国立大学線ではなく、国東と大分の頭文字をとって国大線というこの路線は、大分駅前から別府市街地、亀川、杵築バスターミナル、そして大分空港を経由して、国東を結ぶ。大分県内の路線バスの中では比較的長距離区間を走り、終点までの所要時間は2時間15分だった。杵築の手前までは日豊本線と並走するが、その先は国東半島の外周を概ね国道213号線経由で走る。途中、バスの車窓には別府湾と豊後水道が広がり、風光明媚な車窓も楽しめた。
この国大線は、残念ながら2024年9月に休止されてしまった。現在は大分駅から国東へ行くバスは走っておらず、大分市街からの路線は、亀川地区で途切れている。杵築から国東へ向かう路線バスは現在も運行されており、大分から国東へ交通機関で行く場合は、杵築までJRで行き、国東行のバスに乗り換えるか、大分空港への空港バスに乗って大分空港で乗り換えないと行けなくなっている。

国道から狭い道を入った場所にある国東バスターミナル。大分交通グループで、国東半島でバスを運行する国東観光バスの本社・営業所の一角にバスの待合室が設置されている簡素なターミナルである。大分市街からのバスは大分交通の運行だが、それ以外の周辺のバスは国東観光バスが運行している。確か、以前は一部に大分市街へ行く便も担当していたと記憶しているが、現在はなくなっているはず。営業所や市街地は台地の上にあり、そこから坂道を下るとすぐ海岸へ行くことができた。海岸からは豊後水道の反対側に位置する愛媛県の佐田岬半島の稜線が見えていた。

さて、国東バスターミナルからは国東観光バスの伊美行きに乗車した。伊美は国東半島の北のてっぺんあたりに位置する小さな街。第二走者のこのバスで国東半島の外周をさらに北へと進んだ。航空写真で見ると一目瞭然だが、国東半島の海岸沿いは、中央にあるかつての火山から続く山と、谷間に広がる平地が繰り返される地形をしている。このバスはそれを横切るようにして走っていて、道路もまたトンネルと平地の繰り返しとなる。東側に比べ北側の方が荒々しい地形となっているため、車窓に広がる海もまた見応えがある。この日は風が強く、内海の豊後水道も白波を立てていた。

バスは伊美に到着。ここでは50分くらい乗り換えの時間があった。バス停から歩いて数分のところには姫島へ行くフェリー乗り場がある。ここでお手洗いを借りた。姫島は国東半島の離島。港からも沖合に島は見えている。伊美と姫島を結ぶフェリーは姫島村が運航し、所要時間はおよそ20分。これから乗車する宇佐駅発着のバスもフェリーのりば前を通る。なお、伊美の隣にある竹田津港からは、スオーナダフェリーが発着しており、山口県の徳山港へも行くことができる。徳山港までの所要時間はおよそ3時間。かなり昔からこの航路のことは知っているが、なかなか乗船するタイミングがない。

さて、伊美バス停へ戻った後は、国東半島を行く第3走者のバスに乗車した。伊美以西の国東半島の路線バスは中津市に本社を置く大交北部バスが運行している。大交北部バスもまた大分交通グループのバス会社で、中津、宇佐、豊後高田・耶馬溪エリアなど大分県内北部地域でバスを運行している。伊美から出ているのは宇佐駅行き。途中で昭和の街として知られる豊後高田を経由ながら、日豊本線の宇佐駅へ。国東半島の外周をまわり、およそ6時間で宇佐駅に到着した。初めての国東半島、やはりバスの車窓に眺めた豊後水道、そして周防灘の景色は今も心に残っている。

宇佐駅到着後は、ちょっとだけ日豊本線に乗車。宇佐始発の中津行普通列車に乗車した後、柳ヶ浦で特急ソニックへ乗り換えて、行橋へ。行橋からは西鉄天神高速バスターミナル行の高速バスに乗車して福岡市内へ戻った。福岡市内から北九州方面へ向かうバス路線も、小倉発着系統にはいろいろ乗車したことがあったものの、行橋線はこれが初めてだった。
2日目 佐賀県嬉野市周辺を走るバス路線を巡る
2日目の旅程
博多BT-[西日本鉄道 させぼ号]-佐世保バスターミナル・佐世保駅前-[西肥バス 嬉野行]-嬉野バスセンター-[祐徳バス中川行(吉田線)]-鹿島バスセンター-[タクシー]-祐徳稲荷神社-[祐徳バス湯の田行]-嬉野バスセンター-[祐徳バス 三間坂駅前行]-三間坂駅前-[西肥バス 伊万里駅前]-伊万里駅前-[徒歩]-伊万里営業所-[昭和バスいまり号]-博多BT
2日目も朝から再び博多バスターミナルへ。1日目に乗車したとよのくに号と全く同じ時間に発車するさせぼ号で今度は佐世保を目指した。

この日は佐世保から嬉野、鹿島、嬉野、三間坂、伊万里と辿り、佐賀県嬉野市周辺を走る西肥バスと祐徳バスの路線のいくつかに乗車した。佐世保からは早速嬉野バスセンター行きに乗車。佐世保周辺に路線を張り巡らせている西肥バス。佐賀県の西部に位置する伊万里、有田などにも乗り入れていて、県境を越えるバス路線がたくさんある。佐世保-嬉野間のバスは早岐、三河内、波佐見を経由して走る。有田と並び、焼き物の街として知られる波佐見は長崎県に所在する。バスの車窓にも窯元が見えた。

バスを終点まで乗り通し、嬉野バスセンターに到着。この時まだ新幹線が未開業だった嬉野市。この前年に企画した瀬高駅から彼杵駅への乗りバス旅の最後に、武雄から彼杵までJR九州バスに乗車した際、一度通過したことはあったものの、降り立つのはこの時が始めてだった。街の中心部にある嬉野バスセンターは、国鉄バスの嬉野温泉駅が転じたもの。福岡-長崎間の高速バス「九州号」の一部が乗り入れるほか、JR九州バス、西肥バス、祐徳バスの3社の路線バスが集まり、武雄、鹿島、彼杵、佐世保など周辺一円へバス路線が延びている。側溝から湯気が立ち上る様子が温泉街らしかったのを思い出す。

嬉野から約15分の乗り継ぎで、祐徳バスの吉田線中川行きに乗車。ここから先は、嬉野と鹿島の間を往復しながら、別ルートで両区間を結ぶ2つの路線に乗車した。往路で乗車したのは、吉田線という路線。嬉野市街地の南東部に位置する吉田地区を経由し、その後鳥越トンネルを経由して、鹿島市街地へ向かう路線だった。
バスは営業所がある中川まで行くが、筆者は鹿島バスセンターでバスを降りた。計画ではここで1時間15分くらい時間をつぶし、嬉野へ戻る予定だったが、正直暇のつぶしようがなかったので、駅前からタクシーを使い、次のバスの始発地である祐徳稲荷神社へワープした。祐徳稲荷神社もまた、瀬高-彼杵間の乗りバス旅の際に来ていたので、1年ぶり2度目の訪問。30分くらい時間があったので、ちょっと速足で参道を歩いて神社へ。ちょっとだけ観光気分を味わった後、再びバス停に戻った。

祐徳稲荷神社からは再び祐徳バスに乗車。嬉野線湯の川行に乗り込んで、嬉野バスセンターへ戻った。今度のバスは途中まで武雄行きのバスと同じルートを進み、嬉野市役所塩田庁舎前で左折。県道28号線を経由し、嬉野市街地へ向かうバスだった。往路のバスもそうだったが、バスは開業を数か月後に控えた嬉野温泉駅の近くを経由した。今はこの駅が嬉野バスセンターと並ぶこの地域の交通結節点になっているはず。鉄道が90年ぶりに帰ってきた嬉野市。バスセンターを含め、新幹線開通による変化を見に行かないとなと思っている。

さっきは乗り換え時間が15分しかなく、嬉野バスセンターではちょっと慌ただしく乗り換えたが、今度は1時間弱の待ち合わせとなった。待ち合わせの時間を使って、バスターミナル周辺の温泉街を散策。市内中心部には塩田川が流れていて、この川の両側に旅館が立ち並んでいる。この日は平日だったが、観光客の姿も多かった。この時海外からの観光客はほとんどいなかったが、今はインバウンドも盛況なのではないかと思う。温泉が名物の街に来て、温泉に浸らず帰るというのは、筆者の旅行ではもはや普通のこと。乗り鉄・乗りバス旅は時間制限が厳しく、なかなか温泉に浸る時間はない。

さて、嬉野バスセンターからは、三間坂駅行きのバスに乗車。三間坂駅は、佐世保線の駅で、武雄と有田のちょうど中間に位置する。このバスは嬉野市街地から北へ進んで行く路線である。このバスで三間坂駅へ行けば、そこで西肥バスの伊万里行きに乗り継げる。三間坂でバスで違うバス会社通しの乗り継ぎができるとはちょっと意外だった。途中まではさっき乗車した嬉野行き、そしてJR九州バスの武雄方面のバスと同じ道をしばらく進み、その後は県道102号線、45号線を経由して、三間坂駅へ。終点の三間坂駅は嬉野、武雄、伊万里と佐賀県内各地からの路線バスが走っていて、小さな駅ながら乗り入れ路線が多い。

三間坂では1時間の待ち合わせ。駅を行き交う列車を眺めたりしながら、のんびり次のバスを待った。やがて西肥バスが駅横のバス停に到着。三間坂からはこのバスの折り返しとなる伊万里駅前行きに乗車した。佐賀県でも伊万里や有田に西肥バスがいるのは違和感がないが、嬉野にいるのは結構違和感があるし、三間坂に至ってはかなり違和感がある。この日の日程は、ここでの乗り継ぎをやってみたかったがために企画したようなものだった。三間坂-伊万里間は鉄道だと少し離れている感じがするが、バスだと山一つ越えるくらいの距離感。バスの所要時間も短く、30分かからないくらいで行ける。自分以外にも乗り通す人が多かった。

2016年3月に初めて訪ね、ここでJR九州の全路線完乗を達成した思い出の地、伊万里。その後、松浦鉄道西九州線に乗車しに来ていたので、これが3度目の訪問だった。この日の一般路線バスの旅はここまで。伊万里駅からは少し歩いて、近くにある昭和バスの営業所へ向かい、そこから昭和バスの都市間バス「いまり号」で博多へ戻った。
伊万里は、おもに南西エリアを西肥バスの路線バスが走る一方、唐津方面には昭和バスの路線バスが走っている。唐津と伊万里を結ぶ路線バスには、松浦鉄道に乗りに来た時に乗車している。これから乗車するいまり号も、山本まではこの路線バスと同じ道を経由。その後は西九州道や福岡都市高速を通って、福岡市内へ走っていく。一般道を走る区間が長いため、伊万里-博多間の所要時間はおよそ2時間と長め。このバスで博多へ戻り、今回のSUNQパスの旅を終えた。

伊万里市街地を出たバスは、国道202号線経由で山本を目指していく。その後、北波多で県道52号へ進んだ後、山本駅前を経由。その後は西九州道の唐津ICへ向かい、一旦高速へ。その後、浜玉ICで高速道路を下りると、浜玉中前に停車した。この後は二丈鹿家ICから国道202号線のバイパスへと入り、そのまま西九州道、福岡都市高速と経由して福岡市内へ入っていく。このあたりはバイパスが西九州道の暫定道路になっていたりして、コロコロ道路の様相が変わるのが一つの見どころである。なお、現在のいまり号は唐津周辺での運行経路が見直されており、唐津IC-浜玉間での西九州道利用はなくなっている。すっかり日が暮れた博多に戻ってきて、今回の旅は終了。2日で全く違うエリアを旅したが、まだ見ぬ九州のバス路線を多く巡ることができた。
大分県の国東半島と、佐賀県の杵藤エリアを巡ったSUNQパスの旅。ひたすらバスに乗車した2日間だったが、行ったことのない場所も多く、また一つ、九州を再発見できた旅だった。九州の隅々まで旅できるSUNQパス。今後もこの乗車券にお世話になりながら、まだ巡ったことのない九州各地を旅していきたいと思っている。